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「うがっ!」と叫び、比留川は彼女の身体を引き離し、突き飛ばす。
「あんっ!」と小さく声をあげ、ルゥルアが尻餅をついた。
「貴様っ!」
牧島は比留川につかみかかった。これまでの怒りが爆発した。
「この、クソ変態野郎っ!」
叫びながら、拳を顔面にたたき込む。
もんどり打って倒れる比留川。だが、ヘラヘラとしながら立ち上がってくる。やはりまだ、邪意魔の力が抜けきっていないらしい。
「へへ、やれよ。ほら、かかってこいよ」
比留川が憎々しい笑顔で挑発する。牧島の脳裏に、2年前この男によって惨殺された女性達の顔が浮かぶ。皆まだ若く、多くの希望を持つ人たちだった。その命を、未来を、無残にも奪った。
こいつっ!
牧島は攻撃を続けた。顔面にジャブ。そしてボディに膝蹴り。更にもう一度その横っ面に思い切りフックをたたき込む。
おまえの欲望を解き放て――。
突然、牧島の脳裏に何かの声が響いてきた。
おまえのやりたいことをやれ。我の力を貸してやる――。
なに?
おまえの欲望を、望みを、叶えるんだ。すべてを解き放て――。
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