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ドシッ! と誰かがぶつかってきた。そして、牧島の暴力を止めようと強くしがみつく。
「邪魔をするなっ! 邪魔を……」
振りほどこうとした牧島の動きが止まる。
しがみついてきたのは、ルゥルアだった。彼を見上げている。
「ダメだ、牧島。もうやめろ。やめてくれ……。戻ってこい。いつもの牧島に、戻って……」
必死に訴えかけるルゥルア。その瞳が、涙で濡れていた。
「ル……ルゥルア……?」
「牧島、頼む。戻ってきてくれ……」
ルゥ……ル……ア……。
頭が痛み出す。胸がうずく。張り付いている邪筒が激しく揺れた。RedCrystalの光も点滅している。
「ううっ……」
頭を抱える牧島。
「お願いだよ。いつもの牧島に、戻って……」
泣きながら、ルゥルアは更に牧島を抱きしめた。そして、グイと背伸びをすると、彼の唇に自分の唇を重ね合わせる。
……!
柔らかな感覚が、牧島の強張った思いをときほぐす。徐々に身体からも力が抜けていった。
ルゥルア……。
胸に付いていた邪筒が落ちた。ゴロンと転がっていく。
そっと唇を放すルゥルア。牧島の目を潤んだ瞳で見つめる。
「ルゥルア、ごめん。俺は……」
戸惑う牧島。自分の腕を見つめ、首を振る。
「よかった。牧島、戻ってきたんだな。よか……った……」
ルゥルアが涙声で言う。
「ありがとう、ルゥルア……」
そう言って微笑むと、ルゥルアも笑った。そして、今度は優しく抱き合い再び唇を重ねる。お互いの存在、温もりをしっかりと感じあった。
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