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「おーい、ルゥルア、牧島ちゃん、無事かぁ?」
外から智秋が呼んでいた。
あっ! と揃って声をあげ、身体を離す。
一瞬目を合わせると、ルゥルアは照れたようにそっぽを向いた。
少し先には比留川が倒れている。
やっちまった……。
ため息をつく牧島。怒りをそのままぶつけてしまった。そこを、邪意魔につけ込まれた。危うく怪物になるところだった……。
そういえば、邪筒は?
視線を巡らせるが見当たらない。
ルゥルアもそれに気づいたようだ。慌てて探し始める。
「お、おかしいな。どこに行ったんだ?」
「わからない。この辺にあるはずなんだが……」
がさっ、と音がした。2人が視線を向けると、倒れていたはずの比留川が上体を起こす。そして、ゆっくりと立ち上がった。
「うっ!」
「きゃっ!」
身構える牧島に、ルゥルアが抱きつく。どちらもまた動き始めた比留川を睨みつける。だが、様子がおかしいのですぐに怪訝な表情になった。
ゆらり、と揺れる比留川の身体。意識はないようだ。目は赤くない。むしろ黒く淀んでいる。
ジッとその動きを見つめる牧島とルゥルア。
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