車内~比留川邸敷地内

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 ユラユラとしながら、比留川は歩き出す。広間を横切り玄関に向かった。そして外へ出て行く。  「牧島、あれをっ!」  ルゥルアが叫ぶように言って比留川の腕を指さす。いつの間にか、彼の手に邪筒が握られていた。  顔を見合わせ、後を追う2人。  ゆっくりと歩く比留川の前に、アブルと智秋が立ちふさがった。  「やはり、おまえが来ていたんだな。どおりで、力が出せない時がたびたびあった……」  おまえ、とはアブルと共生している地球外生命体のことだろう。比留川の口から、彼のものでない声が出ている。これは、人の口を使って邪意魔(Evil evil)が喋っているのか?  「その筒の中で静かに眠れ」  アブルが言った。  「そのまま封印されてしまうのはいやだ。まだまだ、我はこの星の生き物の負のエネルギーを食い尽くす」  「そんなことは許さんっ!」  アブルがピシャリと言って、両手を前に上げた。  しかし、比留川は「シャッ」と鋭い声を発し走り出す。  なんだと?!   唖然とする牧島。まだあんな動きができるのか?  慌てて後を追う。  ルゥルアと智秋、アブルも続いた。  比留川は洋館の裏手にまわる。そこは絶壁となっており、下は海だ。  ギチギチと骨や筋肉をきしませて大きく身体を反らす比留川。全身の力をすべて集め、それを使い切るかのように激しい勢いで、邪筒を空へ投げた。  とたんに、バキッ、ブチィと身体が壊れる音が彼のいたるところから鳴り、血飛沫が吹き上がる。そして、ばったりと倒れた。人間としての限界を超えたのだろう。邪意魔(Evil evil)によって、無理な動きをさせられたのだ。  「ああっ! 邪筒がっ!」  ルゥルアが悲痛な声をあげた。  邪筒は暗い空に大きな弧を描いて飛び、海へと落ちて行った――。
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