山下公園

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 ジャケットの奥でスマホが鳴ったのは、その時だった。モニターには見知らぬナンバー。どうするか迷ったが、とりあえず出た。  「よう、元気か、牧島?」  この声はっ!  「ルゥルアっ! おまえ、どこにいるんだ?」  大声になってしまい、慌てて口元を押さえる。  「おまえって言うなよ」舌打ちするルゥルア。「とりあえず、海が見える場所、って言っておこうかな」  そう言う口調が懐かしい。  「優雅に一人旅に出たらしいな?」  「ああ。私に会えなくて寂しいだろう?」  あのイタズラっぽい顔が目に浮かぶ。フッと笑う牧島。  「そうだな。寂しい。勝手に消えやがって。今度会ったら、メチャクチャ強く抱きしめてやるからな」  「ばっ、ばかっ!」ルゥルアが慌てた口調になる。おそらく顔が真っ赤になっているのだろう。「そういうことを、軽々と言うんじゃねえっ! 惑わそうとしてもダメだぞ。私には、大きな目標があるんだ」  「世界征服だろ?」  「そうだよ。まだまだ、絶対諦めないからな」  「俺が阻止する」  「無理だね。ちなみにこのスマホ、あんたや叔父さんやアブルとの連絡だけに使うことにしてあるんだ。それ以外は電源を落としておく。だから、GPSで追おうとしても無駄だぞ。私が必ず、一番最初に邪筒を見つける」  「懲りないヤツだな……」  「今回のはいい経験になった。次は必ず対話する。そして協力できる関係になる」  「また危険な目に遭って、泣きべそかくんじゃないのか?」  「誰が泣きべそかいたっ!?」  怒鳴り声が響いた。苦笑する牧島。  「ルゥルア?」  「なんだよ?」  「おまえが世界征服を目指すとしても、俺は必ず見つけ出して止めてやるからな。覚悟しておけよ」  「……」
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