【ホラーSS】Vtuberの私とそれ以外の私―切り離された2と3―

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【ホラーSS】Vtuberの私とそれ以外の私―切り離された2と3―

「それじゃあ今日の配信はここまでにしたいと思いまーす! 今日も見に来てくれてありがとうございました。みんなおやすみー。バイバーイ」  私は少しだけ流れるコメントを見てから配信を切った。  水無月(みなづき)ミキ。それが私のVtuber名。リスナーにはミキちゃんとかミキ君とか呼ばれてる(ミーちゃんって呼ぶ子もいる)。  配信を終えマウスから手を離した私はそのまま両手を天井に限界まで伸ばした。 「んー! 今日も楽しかったな」  体は少し疲れていたけど心は満足感に満たされてたから今日は良く眠れそうな気がする。そして色々とやるべきことを済ませ私はベッドへ。予想通りいつの間にか夢の世界に旅立っていた。  次の日、朝から何だか体調が優れずその日は配信を休むことに。  それから数日ちょっとの間、色々な事が重なり配信が出来ずにいた。でもTwitterはやってたから「配信楽しみに待ってます」とか「無理せず出来る時でいいですよ」とか色々な言葉を貰えてた。  だけどそれはたまたま見つけた変なツイートから始まった。  配信が出来ぬまま一週間が経とうかという頃。私がエゴサをしているとこんなツイートがあった。 『昨日の配信楽しかったなぁ。元気そうで良かったし』  そこには確かに私のハッシュタグがあったが、当然ながら昨日は配信なんてしてない。まぁ打ち間違えだろう。そう思ってそのままスルーした。  二日後。何故かTwitterのアカウントがログアウトされてて、しかもログインできなかった。 「あれ? 何でだろう。昨日の分もみんなのツイート見ようと思ったのに」  何かの不具合だと思って仕方なく本名の方のアカウントでエゴサをした。もちろん見るだけで間違ってもいいねやリツイートはしないようにしないと。きっとみんな配信してほしいとか色々ツイートしてくれてるんだろうな。そんなワクワクを胸にいつものハッシュタグを検索する。  だけどそこには自分の目を疑うツイートが沢山並んでいた。 『まさか改名するとは思わなかったな』 『前の名前気に入ってたけど今のも良いかも』 『まぁ名前が変わってもミキちゃんはミキちゃんだからね』  改名なんてしてないのに。そのことで話は持ちきりだった。 「どういうこと? 何かのドッキリ?」  私は首を傾げながらも色々なツイートを読んだ。日付はほとんど昨日(中には今日のもあるけどアーカイブを観たとか書いてあるから身に覚えのないそれは昨日発表されたんだろう)。  誰か知り合いのVがそういうイタズラでもしてるんだろうか? そんなことを考えながら私は自分(水無月ミキ)のアカウントを検索してみた。でも不思議なことに出てこない。名前は合ってるはずだけど。一応、@の方でも検索してみたけどアカウントは見つけられなかった。 「え? もしかして……」  そう呟きながらツイートに書いてあった改名の方の名前で検索してみる。するとすぐにアカウントが見つかった。  それはヘッダーもアイコンも説明文も――全てが見慣れたいつものアカウント。だけど名前部分は違っていた。 「黒薔薇ホヅキ? えっ? 誰?」  一瞬真っ白になってしまう程、混乱した頭に思い浮かんだのは――乗っ取り。その言葉で一気に心臓がバクつく中、私はあるツイートを思い出した。確か昨日の配信で改名を発表したとか。  私はすぐさまリンクからYoutubeのアカウントに飛ぶ。出てきたアカウントは見慣れたものだったがやっぱり名前は違う。 「なにこれ……」  それは言おうと思って口にした言葉ではなく零れ落ちた感情。そして目の前の光景は全く意味の分からないものに見えていた。  唖然としたままの私の目に昨日の配信アーカイブが止まる。それはしてもいない配信。  私は恐々としながらそれを再生した。 「はい! 今日はみなさんにお知らせがあります!」 「うそ……」  その声に私は思わず音量を上げる。 「実は私、水無月ミカは今をもって辞めます」  だけどそれは聞き間違えなどではなく確かに私の声だった。もはや頭はごちゃごちゃ。  私は慌てながら別の適当なアーカイブを再生する。これは確かに私がした配信だ。少し声を聞きもう一度昨日のアーカイブに戻る。 「はい。水無月ミカしゅーりょー。ではみなさん。改めまして――初めまして私はVtuber黒薔薇ホヅキでーす!」  全く同じだ。少なくとも私には違いが分からないしリスナーの反応からしてもいつもの私と変わらないんだろう。誰も疑ってない。 「うそうそうそ。一体どういうこと? 何で私が……」  まるで思考と感情が渦に巻き込まれたように訳が分からなくなっていると今のYoutubeアカウントがゲストになっていることに気が付いた。すぐに私はその(Vとしての)アカウントにログインしようと試みるがTwitter同様ログインは出来なかった。  すると静かな部屋にスマホが鳴り響く。そこにはLINEメッセージが表示されていた。相手は唯一Vの私と本名の私を知る親友。 『あんたVの名前変えたんだ。インパクトはあるけど前の方が良かったんじゃない?』 『違うの。私は何もしてないのに勝手に変わってて』 『どうゆうこと? ちょっと配信アーカイブ見たけどあんたの声だったけど? それにいつものあんただったし』 『だって私昨日配信してないし。というかここ一週間色々あってできてないし。それにTwitterもYoutubeもログインできないの』 『え? それってヤバくない? 乗っ取りとか?』 『でも配信してるし』 『ボイチェンとかでよせたとか?』 『そんなことできるの?』 『いや詳しくないから分からないけど』 『私どうしたらいい? めっちゃ怖いんだけど』 『乗っ取りとかあたしも経験ないしな。とりあえず色々調べてみるわ。あんたはとりあえずTwitterとYoutubeに問い合わせてみなよ。乗っ取られたかもしれないって』 『分かった』 『何か分かったらまた連絡する』 『ありがとう』                * * * * *  日も落ち街は自ら光を放ち輝き始めた。  とあるマンションの一室。電気も付いていない真っ暗な部屋。開けっぱなしの窓からは冷たい風が入り込み同じく開けっぱなしのカーテンを揺らす。  暗闇の中、息を顰めたPCの前に置かれたスマホは突然光を放った。画面に表示されたのは一件のLINEメッセージ。 『問い合わせどうなった? あんたのアカウントまた配信してるよ』  するとそれに反応するかのようにPCが動き出しモニターに映像を映し出した。それはとあるVtuberの生配信。流れるコメントと動くV。 「だから今、私は黒薔薇ホヅキですって。間違えないでくださいね。だって水無月ミカは
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