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【掌編】浦島太郎もそれは無理
むかしむかし、ある村に心優しい浦島太郎という若者がいました。
ある日、浦島が海辺を通りかかると数人の大人が大きなカメを捕まえていました。近くまで寄ってよく見てみるとスーツを着てサングラスを付けた強面の男たちがカメを取り囲んでいました。
「おいおい。カメさんよ。ちゃんと払うもん払ってもらわねーと。こっちも困るぜ?」
「す、すみません」
「誰がウサギとのレースに勝たせてやったと思ってんだ? 俺たちだろ? 違うか?」
「その通りです」
「だよな? 俺らがあの休憩ポイントでウサギに睡眠薬入りのドリンクを飲ませたからノロマのお前が勝てたんだろ?」
「で、でもその時の掛け金が……あるじゃないですか」
「あ? お前その後に一体いくら借りたと思ってんだ? 女にギャンブル。随分と楽しんでたよな? あの時の賞金使い果たして俺らから大金借りるぐらいよ。だからそれをさっさと返せっつってんだよ!」
「ひっ! で、でもそんなお金持ってなくて――」
「ねぇで済まされるわけねーだろが! おい、連れてけ」
男たちは泣き叫ぶカメを持ち上げるとどこかへ運び始めました。
「そこのお兄さん助けてー!」
そう叫ぶカメを浦島は釣竿を持ったまま唖然とした様子で見ていることしかできませんでした。
「何だ。兄ちゃん釣りか?」
すると煙の立ち昇る煙草を片手に持った男が話しかけてきました。少し不安が胸でざわつきながら浦島は顔を男の方へ。
「えっ? あっ、まぁ――はい」
「あそこの方、よく釣れるらしいぞ」
男は煙草で奥にある岩場の方を指すと先に行った男たちを追い歩き始めました。
「釣れるといーな」
最後にそう言い残しそのまま行ってしまいました。
浦島はその後ろ姿を見送りながら、
「あんな風にはならないようにしないと」
そう呟き教えてもらった岩場ヘと歩き始めました。
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