【掌編】第X次世界大戦

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【掌編】第X次世界大戦

 以前から議論の的であったとある問題によって二つに分断されていたG七。  日本、米国、ドイツ。英国、イタリア、カナダ、フランス。二つの派閥は白熱した議論を何度も行うが一向に結論には至らず彼らの中では徐々に不満が溜まっていた。  そんな中、火に油でも注ぐように政府機関のハッキング行為やスパイ行為が次々と発覚し始めた。溜まっていた不満の所為もありそれはこの議論を優位に進めようとする裏工作ではないかと互いに怒りをぶつけ合う。  そしてついにこの二つの派閥は互いに宣戦布告し第X次世界大戦が開戦の火蓋を切った。  XXXX年X月X日。  七ヶ国と複数ヶ国の国民はこの日、食い入るように画面を見ていた。 「予定ではもうそろそろですがまだ動きはありません。会場は多くの記者が居ますが緊張感に包まれ静まり返っています」  日本のアナウンサーが少し小声で状況を伝える。  しばらくして多くのカメラが一斉に動き出した。その先からはまるで格闘技の入場のように各国の代表が次々と姿を現す。そして彼らは中央に置かれたテーブルに向かい合って座るが誰一人として一言も口を開かない。  その一触即発の中、スイスの代表が姿を現すと一番奥の席に腰を下ろした。  それからスイスが審判を務めることなど様々な確認事項が読み上げられ、最後は各国代表の前に書類が配られた。次々とサインをし最後は審判であるスイス代表が一枚一枚確認しサインをしていく。  それが終わるといよいよ。  まず各派閥から一名と審判がテーブル前方に用意された舞台へ上った。 「五本勝負の三本先取。それを三セットの二セット先取となります。尚、日本、アメリカ、ドイツは一ヶ国少ないので一ヶ国だけ二度戦う事ができます」  審判は舞台上の代表二名に準備を尋ねた。両者ともジャケットを脱ぎネクタイを緩める。やる気満々と言った様子。 「では一セット目、五本勝負一本目。構えて。――じゃんけん、ぽん!」  こうして第X次世界大戦の勝敗を決めるじゃんけん対戦が始まった。
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