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黙々とミルクティーを味わう私の方を、何やら面白いものを見るような表情で眺めている紅麗さんと、その足元で、相変わらずの「芋虫」状態から、そろそろ痛みが和らいだか…というくらいには、…そうですね、「茹で海老」から「ストローの蛇腹部分」くらいまでには回復した…という感じの青司君に、…これ、すごく美味しいね。淹れ方とか、スパイスの調合割合とかの秘訣ってあるの…?…って訊くと、紅麗さんは何やら、にんまりという感じの、言ってみれば少々以上に人の悪い笑顔を浮かべて、「ほら、グテイ、ご下問だよ?丁重にお答えしろよ?」って、青司君の脇腹、…他でもない、先程自分が蹴りを入れた部分に、更にご丁寧なことに、その蹴りを入れた当の左足の爪先を「うりうり」とめり込ませるので、さすがに見兼ねた私が、…あの、河近さん、その…弟さんを足蹴にするの、そういうの眼の前でされてると、まず私が落ち着いてお話しできないから…って、恐る恐る止めに入ったところ、河近さんは一瞬、豆鉄砲を喰らった鳩…と言うか、猫騙しを喰らった猫とでもいうような感じで、切れ長の目を大きく瞠って「…そっか…」と呟くと、おもむろに青司君の脇腹から自分の足先を退かせてから、
「……そっかそっか、…立花サン、ごめんねぇ…。いや、…うち、これが通常営業だからさぁ…。大体、うちに私らがお客さん呼ぶの、随分久し振りなモンで、その、加減…みたいの?…全然分からなくってさぁ…」
って、決まり悪そうな、何やら飼い主に叱られた猫みたいな様子で、一人掛けソファの上で身体を縮めてました。
その間に青司君は、やれやれ…と言った様子で、脇腹をさすりながらラグの上に起き上がって、
「ほら見ろアネさん。結局、一番『お客様へのおもてなし』から遠いの、アネさんのそういうとこなんだぜ?…いやぁ立花サン、ホントごめんね…?ウチのアネさん、物心付いた辺りからこういうヒトでさぁ…」
って、ぼやき混じりに私に頭を下げてみせ、それに対して紅麗さんがいかにも憎たらしいという様子で「……うっさい、なにさグテイが偉そうに…!」って言い返してましたけれど、どうやら「客人の前」という自制が働いているらしく、実際手なり足なりを振るうのを、自分なりに堪えている様子でした。
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