мир エピソード01

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 13話【心の傷跡】    警察署での出来事から数日経ち迎えた休日。  俺は久しぶりにに病院に来ていた。  患者や白衣を着た医者が行き交う1階からエレベーターに乗り込み行き先ボタンを押して5階へと向かう。  5階に到着するとナースステーションでストラップを受け取りミレイナさんがいる病室へと向かおうと思っていたのだが、情けないことに何号室に入院していたか忘れてしまった。  ナースステーションにいたナースに自分の名前を名乗ってからミレイナさんが入院している病室の部屋番号を聞いた。  ナースは心良くミレイナさんが入院している病室の部屋番号を教えてくれた。  俺はお礼言ってミレイナさんが入院している病室へと向かった。  彼女が入院している病室が見えてきた。  久しぶりなので少しドキドキする。  ゆっくりと横開きの白いドアをスライドさせ中に入った。   だが、部屋にミレイナさんは居なかった。  (あれ?リハビリ中かな?)  居ないのなら仕方がない。トイレならまだしもリハビリの場合1時間近くはかかるだろう。戻ってくるまでここで待っているも退屈だ。  俺は病室を出てからナースステーションへと向かう。このストラップを下げたままでは外に出ることすらできないからだ。  そのときだった。前方に見える診察室から白衣を着た男性医師が出て来た。  (あの医者ってミレイナさんの担当医だよな……)  ひと目見てミレイナさんの担当医であるとわかった。  少し話しかけにくかったが、俺は男性医師に声をかけた。  「あの、ミレイナさんの担当の先生ですよね?」  そう俺が言うと男性医師は少し困った顔で貴方は誰ですか?と返してきた。  仕事がらいちいち患者以外の人間の名前まで覚えていられないのだろう。  「ミレイナさんの友人の新垣達也です。今日は久しぶりに彼女の見舞いに来たんですけど、病室に居なくて。今彼女はどこに居るか分かりますか?」  俺がそう訊ねると男性医師はミレイナ.マカロフさんは今リハビリ中だと思います。もうしばらくすれば戻って来ると思いますと言った。  どうやら俺の予想は当たったようだ。  すると男性医師は「それでは失礼します」と言って立ち去ろうとしたので俺は、  「彼女の具合はどうなんですか?回復に向かってるですか?」と言って男性医師を引き止めた。  一瞬嫌そうな顔をされたが男性医師は立ったままでは他の患者さんの邪魔になるので、座って話しましょう。と俺に言ってきた。  確かにここは診察室のドアのど真ん中、大人の男2人が話していたら間違いなく邪魔になる。  待合用のブルーグレーのソファーに座り、俺は男性医師の話を聞くことになった。  男性医師は「気を悪くしないで下さい」と前置きしてから、カウンセリングは引き続き続けているものの、彼女のうつ症状は最初に比べてややマシになった程度であること、このうつの影響もあると思うが、意欲やメンタルの低下により足の回復が遅れているということを話された。  「足の回復が遅れているって。それって未だに彼女は歩けてないってことですか!?」  俺が驚きながら訊ねると男性医師は「簡単に言えばそう言うことになります。既に治療によって骨は治っていますし、普通なら杖無しで歩けていてもおかしくないんですけどね……」と言ってから小さくため息をつくと、立ち上がって「これで話は終わりです」と言いスタスタと早足で去っていった。  しばらくしてナースと車椅子に載ったミレイナさんが現れた。  俺がナースに会釈するとナースも俺に会釈を返すがミレイナさんは疲れているのか、俯いている。  ナースの押す車椅子が病室へと入り病室のドアが閉まる。  少し時間が経ちナースが病室から出て来たので入れ替わりで俺は中に入った。  ミレイナさんはベッドなどの端に、足を下ろして座っていた。  「リハビリお疲れ様。久しぶりだね」  「タツヤ来てくれてたんだ……」  初めてお見舞いに行ったときは会話すらできなかった。だからなんだか嬉しい気持ちになる。  だが、そんな嬉しい気持は彼女の次の言葉で無惨にも崩れ去ることになる。  「来てくれてありがとう……でも、もう私とは関わらないで……これ以上タツヤに迷惑、かけたくない……」  彼女は俯いてそうボソッと言った。  「え……」  その言葉に俺は絶句してしまった。    to be continued                                                                                                                                                                                                                                                                                        
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