僕のうちのはなし。

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 その不安気な、頼りなく揺れる目を見て、あの日の自分を思い出した。  僕ももしかしたら、こんな表情をしていたのかもな。  ずるずると座り込んで床に手をついた、苦しそうな顔。バタバタと近寄ってきた足音。荒い息遣いの中で、僕の頭を撫でて出て行った後ろ姿。  僕はしばらく身動きが取れなかった。  あのとき、僕はまだ小さかったから。だから、部屋の中をうろうろしたりなんかして。玄関の扉にちょっとした引っかき傷をこしらえたりなんかして。カッコ悪かったなって思ってる。  けど、僕はもう大きくなった。  おばあちゃんの手を握りしめたまま、ゆうくんは眠ってしまった。そのぷくぷくですべすべのほっぺを、僕はぺろりと舐めた。  ちょっとしょっぱかった。
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