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金魚が欲しい。
友達のまあちゃんの家の水槽を見ながら思う。
水槽の中には、数ひきの赤い金魚が自由に泳いでいる。
うろこが艶々としていて、その小さな一枚一枚がきらきらとしている。
触れてみたいな。
触れて、撫でて、ぷっくりとふくれたお腹の部分を押してみたい。
一体、どんな感触がするんだろう。
まあちゃんがわたしを呼ぶ。
本当はもっと金魚を眺めていたかったけれど、仕方がない。
最後にもう一度だけ金魚たちを見てから、まあちゃんと一緒に彼女の部屋にはいった。
まあちゃんとゲームをしている間もずっと、金魚のことが頭から離れなかった。
欲しい。
欲しいけれど、お母さんは生き物を飼うことを許してくれない。
わたしが面倒を見られないと思っているみたい。
だからお母さんにお願いしても無駄だ。
まあちゃんを見る。
彼女はゲームに夢中だ。
トイレを貸して、と言ったら画面から目を離さずにうなずいた。
わたしは部屋からでるとまっすぐに水槽に向かった。
金魚たちがゆらり、ゆらりと泳いでいる。
なんとなく数をかぞえてみる。
一ぴき、二ひきーー全部で八ひきいる。
うっとりと眺めているとむくむくと、触りたい、という気持ちが大きくなっていく。
わたしは周囲を見渡した。
だれもいない。
軽く二、三度息を吸って吐いてから、右手を水槽に浸した。
逃げる金魚たちを端にゆっくりと追いこむ。
動きの鈍い一ぴきをつかんだ。
わたしの心臓の音がとてもうるさい。
それは内緒の行為ーーつまり悪いことをしているからなのか、それともテンションがあがっているからなのか。
わからなかった。
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