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握りしめていた手をひらく。
金魚が口をぱくぱくとさせ、わたしの手のひらの上でじっとしている。
人差し指で金魚のお腹を押してみる。
軽く押しかえされる感触がする。
楽しくて何度も繰りかえす。
繰りかえすうちに、金魚が動かなくなった。
あわてて水槽に戻す。
それでも動かない。
水面に体をかたむけて浮かぶ金魚を見て、急に怖くなってきた。
わたしは水槽を見ないように背を向けると、逃げるようにまあちゃんの部屋へと戻った。
緊張したまま、まあちゃんのとなりに座る。
ばれたらどうしよう。
友達をやめるって言われちゃうかな。
でもそれ以上に、金魚たちに会えなくなることのほうが嫌だ。
だからわたしは金魚を勝手に触ってしまったことを言わなかった。
彼女はゲームに夢中なままだ。
大丈夫。ばれない。
これからも金魚たちに会える。
そう心の中で何度もつぶやいた。
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