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まあちゃんの家からの帰り道、わたしは神社の前で足をとめた。
学校の裏にある神社ーーだれが管理しているのかも、どんな神さまが祀られているのかもわからない神社だ。
晴れた日ですら薄暗いそこは、虫の声も鳥の鳴き声すらもきこえてこない。
あまりにも不気味だから、いつもならば早歩きで通りすぎる。
……今日は中にはいってみよう。
まあちゃんに金魚のことがばれないように、神さまにお願いしなくちゃ。
歩いてすぐに、中にはいったことを後悔した。
やっぱり怖い。
肌がぴりぴりとするような空気が、わたしを全力で拒絶している。
人間のことが嫌いな神さまなんじゃないかな。
そう感じるぐらいに、居心地が悪い。
もう帰ろう。
そう思ったとき、木々の向こうから水音がきこえてきた。
足が自然に音のほうへと向かう。
ひらけた場所にでたとき、わあ、と思わず声がもれた。
そこには小さな池があった。
近づいて池をのぞきこむ。
ーー金魚が一ぴき、池の中から飛びはねた。
ほんの少し、宙に浮いたあとまた、ゆらり、と他の数ひきと泳ぎはじめた。
金魚たちは、どれも白かった。
真っ白な体は薄暗い中にいてもきらめいて見えた。
まあちゃんの家の金魚とは全然ちがう。
大きさも神社の金魚たちのほうが大きい。
それに白だなんて珍しい。
少なくとも、わたしは見たことがなかった。
欲しい。
触りたい。
わたしのものにしたい。
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