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池の周りを囲う石に腰をかけ、金魚たちを驚かせないように眺める。
それなのに、ゆらり、と金魚たちがわたしから逃げるように遠ざかる。
口の端がへの字に曲がるのが自分でもわかった。
これだけいるのに、どれもわたしのものにはならない。
なんだか、いらいらしてきて、勢いをつけて水中に手を突っこんだ。
逃げる。逃げる白い金魚たち。
生暖かい風が頬にあたる。
それは段々と強さを増していく。
水面が揺れはじめる。
わたしは靴下ごと靴を脱ぎ捨てて、池の中へとはいった。
一ぴきくらいわたしにくれてもいいじゃないか。
どうせ無人の神社ーーだれも見ていない。
まあちゃんの家のときと同じだ。
だから大丈夫。
わたしが金魚を持って帰ったとしてもばれない。
怒られない。
怒るとしたら、お母さんだけ。
見つからないように飼うためには、どうすればいいんだろう。
欲しい。
飼いたい。
反対される。
怒られたくない。
たくさんの感情が一度に浮かんで、頭の中がぐちゃぐちゃになる。
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