ゆらり金魚

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いまでもなぜ、そうしたのかわからない。 一ぴきの金魚をつかむと、右目にいれようと顔をかたむけた。 顔に直撃し、金魚は地面に落ちるだけだろう。 そう思った。でもーー。 目の中に、ぱしゃん、とはいってきたのだ。 大きさも目にあわせて、小さくなっている。 ゆらり、と目の表面が揺れる。 白い金魚は池の中とかわることなく、目の中で泳いでいた。 わたしは右目を軽くつついた。 金魚が目の端に泳いでいく。 これって!これで飼うことができるんじゃない?! それにこんな飼いかた、まあちゃんだって……ううん、他の人にだってできない。 風が強くなってきた。 そのせいで体がよろける。 空を見ると雲も黒くなっている。 雨が降るのかもしれない。 早く金魚と一緒に帰ろう。 池からでると、裸足のまま神社からもでていく。 怖さなんてものは、なくなっていた。 雨に濡れることなく、無事に家につくことができた。 お母さんになにも言わずに、自分の部屋にはいる。 わたしはベッドにダイブすると、ごろんと天井を見あげた。 ひらひら、ゆらゆら。 白い金魚の尾ひれは、花びらみたいできれい。 金魚が揺れる。 揺れながら目の端までいくと、くるりと回転してまた反対のほうへ泳いでいく。 わたしだけの金魚。 嬉しくて、楽しくて、その日はずっと金魚を眺めていた。
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