燕雀鳳を産まず、鳳も亦燕雀を産まず

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「ちぇっ。オジさんのオカズみてゲラゲラしようと思ってたのに」 「ここは平和にガキの使い観てゲラゲラしようか」  オジさんがテレビとゲーム機をダイニングのほうに持ってきた。鍋でふたりぶんのお湯を沸かしながらちゃぶ台とかをセッティングしていく。 「え〜、早いものでして、今年も残りあとわずかです。今年は最後までお付き合いいただき誠にありがとうございました。来年もまたお付き合いのほどをよろしくお願い致します。それではP活女子とロリコンオジさんの救えない未来に、カンパ〜イ!」 「カンパ〜イ!」  ジンジャーエールのペットボトルと発泡酒の缶を交わした。 「きみ、忘年会の音頭としては完璧だったよ」 「違ったの?」 「ま、そうなるのかな」  テレビではあの手この手で芸人や仕掛けが浜ちゃんたちを全力で笑わせにかかってた。  それを観てオジさんとふたりで笑いながらついでに尻を打たれ痛がる姿にゲラゲラ笑う。  ひとしきり笑い終えて、その後を考えハッとなった。いまの背中の状態を思い出した。 「オジさん、今日上は着たままでいい?」 「どうしたの?」 「……、今日は背中を見られたくない」  自分で鏡見て引くもん。 「なにがあったか、聞いてもいい?」 「お母さん(あのクソババア)にヒールで踏まれて痣だらけ」 「……、そっか。大変だったね」  オジさんは優しい。不必要に波風立てない。だからオジさんのまえでは安心できる。 「……。シャワー、浴びてくるね」  家を出るまえに浴びたばかりだったんだけど、今日はオジさんと肌を重ねるのにちょっと心の準備が必要だった。 「湯加減はどうだ?」 「オ、オジさん?」  わたしの背中はノックもせずに浴室に入ったオジさんの腕に抱き締められた。背後を取られ、逃げる間なんて全然無かった。 「見ないでよ、こんなのグロいだけじゃん」 「惚れた女の悲しみも背負えないんじゃ、男がすたるよ」 「やだよ、恥ずかしい」 「いいから」  浴室でオジさんが全身にシャワーを浴びせる。独り暮らし用の狭い浴室に逃げ場は無い。 「熱くない?」 「うん、大丈夫」 「しみない?」 「それも大丈夫」 「じゃ、なんで泣いてるの?」  恥ずかしい。傷痕のほうがおっぱいよりもあそこよりも恥ずかしい。 「だってグロいじゃん、汚いじゃん」 「そんなことないよ」  石鹸のついたオジさんの手が、シャワーヘッドを壁に引っかけ全身を傷痕ごと撫でまわす。 「美しくてきれいだよ、こんな大変ななか生きるきみは」  傷痕をオジさんの舌が這いまわる。強烈な刺激に身体が逃げて、男の力で引き止められる。 「でもそれをひとりで抱え込まれたら、オジさんはとても悲しいな」  むず痒くなった場所をオジさんの指がなぞった。数回往復しただけで、強烈な感覚とともに身体が痙攣した。 「オジさんひどいよ、ホントに恥ずかしかったんだから」 「色っぽかったよ。オジさんも我慢できなくなったから、ベッド行こうか」  ぼんやりとまともに頭が回らないなか、わたしはオジさんに身体を拭かれそのままベッドに連れられた。 「オジさん、急だったしゴムないでしょ? 今日は大丈夫だからそのままでいいよ」 「あるよ、ちゃんと着けないと」  あるの。 「え? オジさんこんなやましいこと考えてたの?」 「やましいこともやらしいことも、もうさんざんっぱらやってる気がするけどね」  オジさんはいつもそうだった。優しくて、気が利いて、自分が求めてるフリをしながらその実わたしを悦ばせることしか考えてない。ズルいよ。 「やっぱ、着けないでそのままで来て」  ゴムはオジさんの最後の理性だ。わたしばっかり身体も心も裸にさせられたままで来年なんて迎えたくない。 「ダメだよ」 「いいの。オジさんだって、着たまましたいって言ったのに脱がせたし見られたくないって言ったのに見たじゃん。それでやっとおあいこだよ」 「今回だけだよ。外に出すからね」  そう言うと裸のオジさんがそのまま入ってきた。はしたないくらい滑らかだった。 「動いて。今日は、オジさんの好きに」  オジさんが動くと、ひとつになった感触がゴムに阻まれず伝わってくる。摩擦するなか、ぴくりぴくりと大きく固くなるに従い腰の動きが激しくなる。一箇所の感触に集中しながら口を半開きにさせて唸る顔が愛おしい。 「脚、放して。もう出そうだから」 「オジさん、今日は大丈夫だよ」 「万が一があるだろ。いい子だから、ね」 「ダ〜メ」  わたしは両脚でオジさんの腰を絡めとり、ぱんぱんになった先端を奥で擦ってイジメてあげた。  オジさんが、顔に快感と焦燥感を複雑に入り混じらせて落ち着いた大人の皮を剥いでいくサマが面白かった。 「もう無理! もたない!」  オジさんがナカに我慢の限界を吐き出した。身体と心が征服感で満たされた。 「オジさん、やっちゃったね」 「万が一のときは取れる責任は取るけど、それでもお互い失うモノが多すぎるよ」  オジさんの顔には恥辱と罪悪感だけが残った。大人の落ち着きが消え失せた。  さっきイかさせられた仕返しだよ、こっちばっかじゃ恥ずかしいじゃん。  わたしはその情けない愛おしくてたまらない顔の唇にそっと口づけた。 「オジさん、なんでもっと早く痴漢しなかったの」 「犯罪者になりたくなかったからだよ」 「ならないよ。現に、こうしてならなかったじゃん。オジさんは、自分で思ってるよりもすごくカッコいいよ」  もしオジさんがオクテじゃなかったら、オジさんはたぶんモテてたんだよ。わたしとの出会いもなかったんだよ。
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