燕雀鳳を産まず、鳳も亦燕雀を産まず

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「オジさん、やっとその気になったね」 「どうとでもなれだよ」  わたしがオジさんを引きよせると、オジさんが全身にたどたどしくしゃぶり付きだした。  お母さん(クソババア)、愛娘のファーストキスは痴漢だったよ、ざまあみろ。 「オジさん、もう来てよ。どうせ下手くそなんだから、さっさと始めちゃおうよ」 「わかった」  オジさんが備え付けのゴムを着けだした。ぐだぐだしていて気が滅入る。あ、そうだ。 「そのままでいいよ。そういうの、nsのnnっていうんだっけ?」  これが罰だよ、お母さん(クソババア)。痴漢の精子で妊娠してやる。名門校に居れなくなって、中絶費用を払わせてやる。  お母さん(クソババア)、わたしはあなたの教育のせいで、世間様に一切顔向けできなくなりました。 「それはダメだよ」  ヘタレめ。ダメだからこそいいんだよ。 「オジさん、約束するよ。何が起きてもあなたに責任は一切問わない。  でも、してくれなかったら今までのことで訴えるから」 「もうオジさんは、後戻りはできないんだよ」 「わかった」  オジさんの先端が探り探り擦りつけられる。ぐだぐだもたもたしたのちに、やっとなかに押しこんできた。 「あ! ごめん! 出る!」  お腹の上で、元気な棒が跳ねまわった。撒き散らされて生暖かった。 「オジさん……?」  テレビでは、男優が豪快に腰を振っていた。女優が大声で喘いでいた。  オジさんは、何枚も取ったティッシュで拭いていた。 「ごめん……」 「もう一回、できる?」 「無理」  こんな形の計画倒れ、わたしは絶対納得できない。 「もういいよ、警察を呼んでくれないかな。オジさんが悪かった。潔く間違ったことをした責任をとるよ」  さっきとはまた違う観念した顔。ふざけないで。 「いいのオジさん? そんなことしたら人生お先真っ暗だよ?」 「いいんだ。人生お先真っ暗になるようなことは、もうしてしまった」 「オジさんは、わたしとエッチしてくれればそれでよかったんだよ? 被害届を出すつもりなんて、最初からなかったんだよ?」  意味がわからない。思わず痴漢したくなった相手を抱くだけでいいって言ってるのに。 「聞かせてくれ。きみは何が目的だったんだ」 「エッチしたかった」  言うもんか。プライバシーに踏み込まないで。 「しらばっくれないでほしいな。金が目的ではないみたいだし、こんなだらしない身体のオジさんに発情したとも思えないよ」  それはどっちもどっちでしょ。そっちもこんなブスに痴漢したじゃん。 「どうせ警察署で、そこは根掘り葉掘り聞かれるよ。だんまりは公務執行妨害だ」 「警察に話せないようなことなら、やっぱりオジさんがここで聞こうかな。ここでなら誰にも聞かれないよ」  畳みかけられてウンザリしてきた。オジさん、エッチと違ってガツガツし過ぎ。 「お母さんへの、あてつけだったの」 「あてつけ?」 「わたし、今朝お母さんに痴漢のことを話したの。そしたら、まともに聞く耳持ってもらえなかった。そうじゃなかったら休んでた」  オジさんはバツの悪そうな顔をしていた。 「ひどいね」 「でしょ? 最近毎日どこの誰ともわからない同じ人にカラダを触られてて、触り方もだんだんいやらしくなってきて、怖くってキモくって仕方なかったのに、言っても聞いてくれなかったんだよ」  イヤミを込めて言ってやった。ついでにいまは、痴漢よりも気持ち悪い。 「刺さるなぁ〜」 「で、ムカついちゃった。その腹いせに、痴漢とシてお嫁に行けなくなってやろうって思っちゃった」 「今の時代、『処女じゃないとお嫁に行けない』って考えは古くないか?」 「そこでオジさんがゴム着けるのに手間取ってたし、どうせなら妊娠しちゃうかって」 「『愛娘』はこんな『ただ名門校の制服着てるだけのブスに痴漢するロリコン』の『残念な精子を受け入れ』て『お先真っ暗』になりましたって、『ザマーミロ』じゃん」  どう? こんな話聞きたかった? そんな残念な理由で肉体関係を求められたって知りたかった? ただ気持ちよくなったあとハイさようならのほうがよくなかった? 「そうだね、オジさんの話も聞いて欲しいな」  うっわ〜、そう来るの? めんどくさっ。
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