心臓、れいぞうこのなか

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心臓、れいぞうこのなか

 持ってっていいわよ。  ワタシなんかが使うのはもったいない。  14歳。頭の悪いオンナ。  へたくそ、はみ出したアイラインで侮られ1万にもなりゃしない。  投げ売りで買った12センチハイヒールは、日々ワタシのくるぶしを殺す。  それでも諦められずあこがれ続けた。  あの人の、カツカツと高く鳴らすカカトの音が好きだった。  ちゃんと進んでいる、歩けていると感じるから、だから間違えた。  くそやろう。やってられるか。  ワタシの足は甲が高すぎるような気がするのだ。  そもそも、この靴をお前が履くことが間違いなのだと、すれ違う全ての人の目が責めてくる。  違う。そんなことないと言って。いや、そうだ。もう無理に脱がしてくれ。  ひきずって歩く。歩く、歩く。  ワタシはいつまで間違えればいいんだ。  ワタシは間違えたまま、もう二度とあの分岐点には戻れないんだ。  リセットボタンはない。  誰もが言うじゃないか。歌でも、偉い人でも、ニュースでも友人でもゲームでも漫画の中でも。  やり直しはきかない。
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