心臓、れいぞうこのなか(10)

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心臓、れいぞうこのなか(10)

 今日自室で、ぶっ壊されて無残な有様になった宝物を見つけてしまったワタシにとっては、やはり母は絶対だったのだと絶望せざるを得なかった。  ワタシの助骨をかっぴらく方法。心臓を剥き出しにしてしまう方法をこいつは知っていた。  従順な人形に戻す為に、痛ましい想像に、苦しんだふりをしてみせて戻って来いと言うのだ。  そんなたったふたりの終わりの、成れの果てを見た。見つけてしまった。勝った気でいたワタシを残酷な方法で「正気に戻す為なのよ」と言う母。  そんなわけあるか。ワタシはもうずっと正気だ。  けれど、こんなの、こんなのってない。  母にとっては、ワタシを殺すのは容易いことだったのだと改めて知った。  こんなことはしたくなかったのよ、と。言うんだ。そうか、そうなのか、おい、嘘をつけ。  毎日、毎日、毎日、どうしてやろうか、と、変わらずワタシの部屋を嗅ぎまわり、ベタベタと手垢をつけていたくせに。  なんてことだ。何も気づかなかったなんて。ワタシが全て悪いのだろうか、だってこんなことは、あんまりじゃないか。  わからない、どういうことなの。どうしてこうなってしまうの。  これはワタシの命だと言うのに。命なのに。大切な、たいせつな。  今まで少しずつお姉ちゃんがワタシに持たせてくれたスカートや、可愛らしい刺繍のしてある靴下やブラウスが、全て鋏でぐちゃぐちゃに切り刻まれていた。  それが、ゲロみてえな食事が捨てられているゴミ箱の中で、染みだらけになっていた。  どうして。  どうして、どうしてどうしてどうしてどうしてこんなことこんなことするの、どうしてなの!!!!!  押入れの天蓋の上の板を外して、その上に埃から守るように何重にもタオルやシーツで巻いて隠していたのに。  膝をつくワタシを笑っているのか、お帰りなさい、かえってたの、なんだとなんだとなんだと帰りたくて帰ってきたわけあるか後頭部が痛い、痛い、痛い。  あ。ワタシ、またやられてしまうの。
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