心中ごっこ

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心中ごっこ

私は少し考えて、それで 「じゃあ私も」 と、息を吐くのに合わせて声を出していた。 親友は少しびっくりしたような顔をして、眉根を寄せて考えたような素振りをして、それから、それでも、最後には顔をくしゃくしゃにして笑った。 その顔が、なんだか今まで見たこともないような満ち足りたような笑顔だったから、たまらない気持ちになって、親友が死ぬなら私も一緒に死ぬことにしよう、と思った。  ひとしきり他愛もないじゃれ合いをして、それから二人でコンビニに酒を買いに行った。 腕を組んで、結構な大声で喋くって笑い合いながら、もう既に酔っぱらっているように、時々親友が私にもたれかかってくるものだから、その度によろけては電柱にぶつかりそうになった。 帰って来るとさっそく家にある痛み止めやら風邪薬やらを全部ありったけ集めて、半分ずつわけっこにした。 居間にいくつか度数の高い酒を並べて、新聞から引き抜いたチラシの裏に適当に「先立つ不孝をお許しください」とだけマジックで書いて、テーブルの上に滑らせる。
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