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「課長が好きです」
「俺も好き」
「本当に好きです」
「俺も本当に好き」
そうやって何度もお互いの気持ちを伝え合った夏の夜。
「こ、このまま、できれば男女の交際というものをお願いしたいんですが……」
死ぬほど謙虚な唐田の言葉に悶絶しながら俺達の交際は始まった。
しかし今、俺の前には大きな壁が立ちはだかっている。
「課長、おはようございます」
「おはよう」
早朝のオフィスで顔を合わせても、俺達は何食わぬ顔で挨拶しただけですぐに自席へ向かった。
しかし座った瞬間、唐田はちらりと俺を見てはにかみ、真っ赤になって目をそらす。
……あー、可愛い。
緩みそうになる顔を手で覆う。
公私混同をしないのがモットーの俺達は、もちろん交際を始めたからといって社内にそんな空気を持ち込むことはなかった。
だけど正直、頭の中に湧いてくる煩悩を振り払うのに苦労する。
一度業務に集中したら楽になるが、それでも不意に彼女が目に入った瞬間、心を奪われそうになることがしばしばだった。
「唐田さん今日も鬼スピード!」
「課長今日も塩だなー」
そしてこの苦悶は、仕事中の話にとどまらない。
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