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「………………」
ショッピング街にひっそりと佇むジュエリーショップの前で、一人立ち尽くす。
中から女性店員に会釈されるも、ドアを開けることができなかった。
到着してから気づいた。
……しおりの指輪のサイズ、いくつだ。
振られそうになったからって暴走しすぎだろ。
自分のバカさ加減に呆れながら、諦めて踵を返した瞬間。
「あれ?天野さん?」
見覚えのある女性が一人、目を見開いて俺を見つめている。
「偶然ですね。私、職場この近くなんですよ」
「敦子さん……」
幸運の女神だ。
「こんなところで会うなんて。こんな……え?ジュエリーショップ?」
すがるような気持ちで頭を下げる。
「敦子さん!しおりの薬指のサイズ教えて下さい!」
「………………」
深々と頭を下げ、再び上げた時には、彼女は身体をくの字に曲げて腹を押さえ笑い悶えていた。
「あの」
「ごめんなさい!なんだかすごく、こう、面白……いや、素敵だなって思って」
ひとしきり笑い終えたら満足したのか、敦子さんは咳払いして真剣な眼差しに戻った。
「もしかして……しおりに」
負けじと真剣に見据えはっきりと肯く。
「プロポーズするつもりです」
途端に彼女の表情は華やぎ、目には涙が浮かんでいた。
「しおりには内緒にしておいて下さいね」
「もちろんです!言いたいけど!ホントは今すぐにメールしたいけど!あー言いたい!」
敦子さん経由になってしまわないか心配になってきた。
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