唐田さんはストイックすぎる

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「……天野さん。しおりを宜しくお願いします」  再び真面目な顔つきになった敦子さんが、さっきの俺と同じように深く頭を下げた。  あまりにも熱心に頼んでくれるので、彼女のしおりに対する思いが伝わり胸が熱くなる。 「敦子さんはしおりのこと、とても大切に思っているんですね」  つい顔が綻ぶと、敦子さんも柔らかく笑った。 「そうなんです。しおりは私の唯一無二の親友だから」  そう言い切れる、向こうからもそう思われているであろう関係が羨ましく思った。  俺には入り込めないような、強固な絆で結ばれていることに少しだけ嫉妬する。 「私ね、こんな性格だから、小学校の時に周りの女子から疎ましがられたことがあって。しばらくハブられちゃったりもしたんですけど。その時も、しおりだけは傍にいてくれた」  初めて知る幼少期のしおり。  微笑ましく思いながら、彼女の話に耳を傾ける。 「お節介で、自分が得た知識とかついつい人に教えたくなっちゃう私のこと、しおりはウザがらないで認めてくれたんです。教えてくれてありがとうって、いつも喜んでくれて」  素直なところは昔からなんだな。 「しおりまでハブられちゃうからって何度言っても、しおりは頑なに私と一緒に居てくれた。どんな意地悪されても、絶対に屈しなかった」 「なんだか想像がつきます」  ストイックで芯の強いところも変わってないのか。  幼い頃の愛らしい彼女を想像して苦笑する。 「しおりは強い人だから、余計心配だったんです。強すぎて自分を犠牲にしちゃう。誰よりも幸せになって欲しいのに」  さっきのやり取りから彼女の人となりを身に染みて感じていた俺は、敦子さんの言葉が痛いほどわかった。 「そういうところも含めて、彼女を愛しています」  だからこそ、共に歩んで行きたいんだ。 「……天野さんなら、間違いないですね」  敦子さんは安堵したように微笑んだ。 「しおりの薬指は七号で丁度良いと思います」 「七号。ありがとうございます」 「どうかお幸せに」  彼女は自分のことのように幸せな表情で、軽やかに去って行く。 「七号……」  敦子さんに強く感謝しつつ、今度こそ胸を張って店の扉を開いた。
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