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大安吉日。
ホテルのレストランの個室で、俺としおりは神妙な顔を見合わせた。
「ごめんな、しおり。今日はしおりのご家族との食事会だったのに、うちの連中まで無理言って」
「とんでもないです。また皆さんにお会いできるの嬉しいです」
お互いの両親に挨拶を済ませ、結婚の許しも得ていた俺達は、定期的にそれぞれの実家に訪れるまでに行き着いた。
しかし両家の顔を合わせることは初めてだ。
壮介が「何何?食事会?俺達も行きたい」とごねたのが発端だった。
「それに、聖実さんのご家族に私の家族を紹介できるの嬉しいです。その……私達も、これから……家族になるんだし」
真っ赤になってはにかむ姿が可愛すぎて、今すぐ抱き締めたい衝動に駆られるが、ご家族の手前ぐっと堪えた。
「なんだよー姉ちゃん!こんなイケメン捕まえて!こんだけハイスペだったら文句言えねーじゃんか!もっとこう一つくらいヤバイ面見せてくれねーと!頼みますよ聖実っち」
「克也!」
今日初めて顔を合わせた弟の克也くんは、やはりまだ俺との結婚に賛成しきれていないみたいだ。
「………………」
しおりのお父さんは、物腰柔らかではあるがとても寡黙だ。
結婚の挨拶へ行った時も、「そうか。よろしく」しか言わなかった。
「ごめんなさいねえ、聖実ちゃん。お父さん、死ぬほど人見知りなの。しおりもお父さんに似たんだわ。それよりこのなんかゼリーみたいなやつ頂いてもいいかしら?」
「お母さん!揃ってからにして!」
しおりの家族が皆気取らず朗らかな方達で良かった。
「司会進行は、わたくし庄司敦子が務めさせて頂きます!」
「よっ!あっちゃんかっこいー!」
「克也!」
何故か敦子さんも居るし心強い。
問題があるとすれば、……それはうちの家族だ。
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