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01.30歳の誕生日 俺は童貞のままだった。
知ってるか?
30歳まで童貞だと、股間にもう1本生えてくるって噂。
いやいや、もう1本生えてくるってどういうことだよ。
同じ場所に2本ってことだろ?
おしっこはどっちから出るんだ?
両方からか?
それとも交互とか?
考えただけでバカバカしい噂だ。
まぁ、30歳まで童貞だと魔法使いになるっていう噂も昔からあるぐらいだし、それだけ男が30歳まで童貞でいるってことがファンタジーだったんだろうな。
けどさ。
ふ。
わかってる。
何も言うな。
あぁあぁ、そうだよ。
俺は童貞。
しかも今日が誕生日で30歳だ。
まさか本当に30年間も、1人でのマスターベーションだけで過ごすなんて、誰が思ったよ。
高校で女をヒーヒー言わせるか、大学でヒーヒー言わせるか、もしくは仕事をし始めてから、ヒーヒー言わせるかのどれかだと思ってたのに。
なんだよ。
女を抱くなんて。
どうやったら、そういうシチュエーションになるんだよ。
ちくしょう!
ただ1つ言っとくけどな。
俺のスペックは悪くない。
学歴もあるし、一流企業に勤めてるし、給料だっていい方だ。
ちょっとしたディナーぐらいおごれる懐の深い男だ。
まぁ、ただ、1人が自由でいいって言うのか……いや、本音を言えば傷つきたくないだけだ。
男女の関係になって、すれ違ったり、プライドを傷つけられたりすることを考えると、一歩を踏み出せなくなる。
しかし困ったことに、俺の性欲は並大抵のものじゃない。
いつだって発情できるし、どこでだってムラムラしてる。
だから30歳になった今でも、寝る前には必ずオナニー。
中学の時からずっと毎朝、俺は自分のムスコへの愛を忘れたことはない。
けどな。
これだけは言わせてくれ。
俺はスペックもいいし、もてない男でもないってことを。
実際、大人になって、女をヒーヒー言わせるチャンスはやって来たんだ。
そうあれは、俺が今の会社に入ったばかりの頃。
同期のやつらも結構いたから、同期会みたいな感じで、何度も飲み会をしていた。
そこで仲良くなったのが、同期の受付嬢の庄ちゃん。
もちろん、超美人。
2人で飲み会を抜け出して、公園のベンチでキスをした。
初キスだ。
もちろん、そんなことは悟られたくないから、リードしたよ。
女の唇って、めっちゃ柔らかい!
とか思ってたら――
ドピュッ
まさかの射精。
幸い庄ちゃんは、「何かイカ臭くない?」と言っただけで、俺が射精したことには気づかなかった。
俺は股間を隠したまま、彼女を1人公園に残したまま立ち去った。
庄ちゃんとはそれっきりだ。
何とも情けない話。
それっきり、俺は女性とキスをするのも怖くなってる。
こんなんじゃ、エッチなんて一生できっこない。
その時のことを思い出しながら、30歳になったばかりの俺は、今日もむなしく1人でマスをかき、そのままベッドで眠った。
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