異変

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異変

 誰だって未来のことはわからない。それは当然、結婚したあとのことだって――。 「またラインのメッセージがきてる……」 (今なにしてる?)(誰かと会っていないか?)(どこにいる?)  1時間おきに夫の良平さんから送信されたメッセージを、なんの気なしに眺める。  付き合ってるときにはこんなふうに、何度もメッセージを送ってこなかったというのに、結婚した今になってから、どうして頻繁に送ってくるのやら?  困惑しつつも返信しようと、スマホにタップしかけた手がぴたりと止まる。沸きあがる気持ち悪さを口元に手を当てて我慢し、そのままトイレまでダッシュした。  現在妊娠中の私、上條美羽。夫の良平さんは職場の上司で、授かり婚だった。それでも1年半の交際を経ている関係で、自分なりに彼の人となりを見極めてはいたのだけれど。 (こんなにも彼が連絡魔だとは、思いもしなかったな――)  寿退社後、妊娠初期の悪阻で新婚生活は申し訳ないくらいに、良平さんに甘えっぱなし。今朝も具合が悪すぎて起き上がることができず、ベッドから見送った。  朝から水分以外なにも飲食していないので、当然吐くものもなく、ふらつきながらトイレを出る。ため息まじりにリビングに戻り、テーブルに置きっぱなしのスマホを手にした。  飲みかけのオレンジジュースの入ったコップを撮影後、『相変わらず体調悪くて寝ています』というメッセージと一緒に、さっきの写真を添付して送信。  するとすぐに既読がついたのに、返信はない。それはいつものことだった。 (私の体調を気遣うために、忙しい仕事の合間を縫ってわざわざチェックしてくれるだけでも、ありがたいと思わなきゃ……)  そう自分に言い聞かせて、ソファの上で横になる。この悪阻が早くよくなることを祈りながら、目頭に浮かんだ涙を拭ったのだった。
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