対峙

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「なんていうのかな。おなかが空っぽになったら、心の中も空っぽになった感じって表現したらのいいかも」 「美羽姉……」  私の気持ちに寄り添うように、学くんの大きなてのひらが私の手を包み込んでくれた。じんわりと心休まるぬくもりを感じたおかげで、冷たかった手に自然とあたたかみが増していく。 「私の体がこうなった以上――」  学くんを眺めがら、ぽつりと語ったそのときだった。ノックもなしに病室の扉がスライドして開く。息を切らした良平さんが私たちを見て、瞳に強い怒りを滲ませた。 「良平さん……」  血走った目で駆け寄るなり、立ち上がりかけた学くんの胸ぐらをいきなり掴む。 「てめぇが俺と美羽のコをダメにしたんだろ、ええっ!?」 「上條さん違います、話を聞いてください!」 「そうよ、良平さん。落ち着いて話を聞いて!」  私は慌てて起き上がり、点滴を自力で引き抜いて、揉み合うふたりの間に入った。良平さんの片手が力任せに私の胸を押したせいでよろめき、ベッドに倒れ込む。 「美羽姉っ! 病人になんてことしてんだっ」  今度は学くんが良平さんのジャケットの襟を掴んだことで、つばぜり合いの様相になる。背の高い学くんだけどひょろっとしているので、ガタイのいい良平さんに力負けしそうに見えた。 「その病人に手を出しておいて、よくそんなことが言えるな」 「出すわけないだろ。美羽姉とはただの幼なじみの関係だ」  ハッキリと言いきった学くんに、良平さんの瞳が意外なものを見る感じで見開かれた。 「その幼なじみのお姉さんを相手に、妊娠中なのを知っていながら激しくズコバコしまくって、いっぱい中出しして気持ちよくなったんだろ」 「なっ!?」 「いろんな意味で、すごく気持ちよかっただろうさ。さぞかし優越感を味わったんだろうなぁ。その生セックスのせいで、美羽は流産したん――」  思いきり右腕を振りかぶった学くんの拳が、良平さんの顔目がけて振り下ろされる。ストレートをモロに食らっても、学くんの左手がジャケットの襟を掴んでいるため倒れることなく、良平さんは頬を腫らしたまま、目の前にいる学くんを睨み続ける。 「はっ、事実を突きつけられたからって、暴力を振るう雑魚を相手にする、美羽の神経もどうかしてる……」
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