執着同居〜幼なじみの危険な愛〜(コミック案)

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【第1話のシナリオ】 ■(郊外の海辺・昼) 淡い青空の遠くでトンビが二羽、飛んでいる。 <達樹には、絶対に言っておかなくちゃ――> 岩場の向こうでザパーンと波が高く上がっている。 達樹「今、なんて?」 結衣「彼氏とその……したってこと」 達樹「え?」 ブレザー姿の結衣は三角座りで照れ臭そうに笑う、その姿を見つめる達樹。 結衣「達樹にはたくさん相談に乗ってもらってたでしょ。だから、一応報告ね」 達樹「そっか……よかったじゃん。結衣ねえが本当に好きな人と結ばれて欲しかったから、俺超嬉しいよ」 結衣「うん。達樹ならそう言ってくれると思ってた」 達樹「……」 ■場面転換(黒画面) <ごめん、達樹……全部全部分かってるの。あなたが一番欲しいのは、私だということは……だから、逃げなくちゃ> ■場面転換(ボロアパートの一室・夜) <神奈川県某所、築55年、みはる壮、201号室。 望月結衣、31歳、人妻……1日1日をただ生き抜くために、ここで動き回っている> 結衣「あ~寒くて死んじゃいそう。全然ヒーター効いてないよぉ」 結衣が小さなこたつの上に作ったばかりの夕食を並べていると、ガチャッと扉がひねる音が聞こえてくる。 結衣、振り返る。 満面の笑みを浮かべたスーツ姿の達樹が、コンビニ袋を片手にバタバタと部屋に入って来る。 達樹「結衣ねえただいまー! おっ、超いい匂いしてるじゃん。今日は肉じゃが?」 結衣「達樹やっと帰って来た! 大正解だよ、早く着替えて来て」 達樹「おっけ。あ、これコンビニで買ってきた新作のスイーツ。後で一緒に食べよ!」 結衣「やった」 <達樹ってやっぱり優しいよね……> ■場面転換(黒画面) <たった今帰って来た金髪男――木島達樹は、私の同居人で古くからの幼なじみ。 この彼の住むボロ屋に私が居候させてもらってから、今日で丸1週間が経過した> ■場面転換(ボロアパートの一室・こたつ・夜) 結衣と達樹、向かい合って食事をする。 達樹は笑顔、結衣は真顔。 達樹「セレブ妻の結衣ねえもすっかりこの土地に馴染んじゃったね! もう元の場所には戻れなくなっちゃうんじゃない?」 結衣「まさか! こんな治安の悪い場所いつまでもいられないわよ。食材を買いに行けば酔っ払いに絡まれるし、家は虫だらけだし」 達樹「酔っ払いに絡まれるのは結衣ねえが綺麗だから! 虫は~ご愛嬌ってことで!」 結衣「はぁ……?」 <私がこんなところで、ガラの悪そうな男と向かい合って米をつつているとは、港区の友人たちも、そして私の夫も夢にも思わないだろう> 結衣は小皿に乗せたたくあんに手を伸ばしかけ、ふと視線を上げる。 達樹はキョトンとした顔。 結衣「そういえばね、昨日までにLINEをくれた女の子には、全員話はつけといたよ。 みんな結構やる気になってくれてて、本番までに心配になったら私に連絡が行くようにしといたから」 達樹「さっすが! 俺とか他のやつらじゃこうスムーズに入店決めてくれないんだから。ちゃんとアッチは弾ませてもらうからね」 結衣「ありがと」 笑顔で微笑み合う2人。 <達樹たちが繁華街でスカウトしてきた女の子に、風俗店をあっせんする仕事――これが私の今の職業。 褒められた仕事じゃないことは重々承知だ。 けれどそれも自分の手で稼げる唯一の仕事だし、これはこれで褒められると嬉しい> ■場面転換(ボロアパートの一室・テレビの前・夜) 結衣「ふぅ、お腹いっぱい」 壁にもたれかかる結衣の膝に、達樹が頭をのせる。(膝枕) 結衣「何……」 達樹「いい枕があったから」 達樹はチラッと八重歯を覗かせて、人懐っこい笑顔を浮かべる。 結衣はドキドキする。 <達樹、笑うと昔の頃と全然変わらないな> 結衣は太ももに広がった達樹の金髪に指を通し、テレビに視線を向ける彼の横顔を観察する。 <やっぱり、前よりカッコよくなったよね。まぁ昔から顔はいいからモテてはいたんだけど> 結衣は達樹の唇に指を置く。 結衣「ね、地味に気になってたんだけどこの唇にある傷どうしたの? 結構深いのも多いし……。 私と離れてる間にすっごいひどい喧嘩したとか?」 不安そうな結衣に対し、達樹は笑顔。 達樹「それ聞いちゃう? シャレにならない武勇伝的な話をすることになるけど」 結衣「じゃあいいや」 達樹「つまんねー女」 結衣「うるさい」 <達樹はこんなんだけど、性格は昔からめちゃくちゃ優しい。 昔近所に住んでいた私たちは、血は繋がっていないけれど本当の兄妹のように仲がいいのだ> ■場面転換(ボロアパートの一室・布団が敷いてある・夜) パジャマ姿でパック中の結衣は笑顔。 廊下に向かう達樹を見送る。 達樹「じゃ、俺風呂入って隣の部屋行くから。ゆっくりしてね」 結衣「ありがとう。達樹」 達樹「お休み、結衣ねえ」 襖が閉まり、満足そうに笑う結衣。 結衣「はぁ~……こういうの全然悪くないな」 <家で仕事をして、達樹と楽しくご飯食べてダラダラテレビを観て、1日が終わる。 なんて幸せなんだろう> 紐電気をカチッと消し、布団に入った結衣は、目をつむる。 <修一との暮らしは、ラクができなかったし。 ひとりっぼっちの時間が長かったもんな……> (※以下回想に入ります) ■場面転換(結衣が住むタワーマンションの一室・昼) 結衣と修一がソファに座って笑う。 <タワーマンションに住んで、高級外車に乗って。 さほど仲良くないお金持ちの友人と話しを合わせるために、無駄な出費を繰り返す生活> (※以上回想終わり) ■場面転換(ボロアパートの和室・布団が敷いてある・夜) 結衣、苦しそうな表情。 結衣「今思えば、幸せだったのかな私……」 <ここは今までの『普通』とは、大きくかけ離れた場所。 でも、こっちの方がすごく性に合ってる> 結衣「なんでも高級にこだわっていた生活は、田舎育ちの私には無理があったんだろうなぁ……」 低い天井に向けて、片手を挙げる結衣。 結衣「それにしても……私は達樹に拾われなかったら、今頃どうなってたんだろう」 <音信不通だった達樹と偶然再会したのは、ほんの一週間前のこと――> (※以下回想に入ります) ■場面転換(結衣が住むタワーマンション・外観・夕方) 女「んっ、あああん」 ■場面転換(結衣が住むタワーマンション・一室・夕方) 結衣、顔面蒼白で持っていたショルダーバックを、ドサッと床に落とす。 結衣「え……?」 夫、修一が女とソファの上で夢中で体を重ねている。 修一に組み敷かれてる女、結衣に気づき大きく目を開ける。 女「きゃあっ!!」 修一「結衣!?」 修一は全裸で振り返る。そのまま結衣の元まで近寄ってくると、勢いよく土下座する。 修一「ごめん、結衣!」 結衣「さようなら、修一」 ■場面転換(黒画面) <自分でも不思議なほど冷静な声だった。 酷く傷ついているはずなのに、涙一粒湧いてこないのはなぜだろう?> ■場面転換(山手線・人でごった返す車内・夜) <つっ、頭いたい……あれ? 私……あのまま電車乗ったんだっけ?> 結衣は電車の座席に座ったまま、目を開ける。車内はとても混雑している。 結衣「今、何時だろう」 電車のアナウンス『次は高円寺—……高円寺—……』 <私、山手線を1周以上回ちゃってる……でも寝たらちょっとすっきりしたな> 結衣、膝の上にあるハンドバックを覗く。 <財布とスマホしか入ってないや。とりあえず今日はホテルに泊まりたいんだけど> 結衣「え……」 結衣、財布を開けショックを受ける。 結衣「現金、2万円……ギリじゃん」 <クレジットカードはたくさんあるけれど、全部修一の口座から引き落とされるものだし。 この気に及んで、あいつのお世話にぜーったいになりたくない!> 結衣はハァーッと大きくため息をつき、電車の窓の向こうを見る。 ホームに溢れかえったサラリーマンを見て、無表情になる。 <こんな窮屈な世界にもういたくない。いっそのこと死んじゃいたいんだけど……> 電車のアナウンス『錦糸町―、錦糸町―』 結衣「……」 結衣、その場に立ち上がり、電車から流れ出る人の波に体をゆだねる。 <このまま人の中に埋もれて、消えることができたらいいのにな> ■場面転換(錦糸町・街並み・夜) 結衣、人が多い錦糸町の街を歩く。 結衣「とりあえずどこか安いところに泊まろう……」 途中酔っ払いに絡まられたり、悪そうな若者に絡まれたりして走って逃げる。 結衣「ホント、治安悪すぎ。錦糸町ってこんなところだっけ……」 ■場面転換(錦糸町・ソープランドの外観・夜) 人けのない場所で結衣が立ち止まる。 『人妻・熟女』のソープランドの看板を見つめる。 結衣「熟女、人妻か……31歳じゃ、まだ熟女ではないのかな」 結衣の脳裏で、修一の不倫現場がフラッシュバックする。 修一の腕の中にいた歳がいった女を思い出して、拳をギュッと握る。 <私はずっとずっと抱かれてないのに、あのオバサンのことは抱くんだ> 結衣「もうなんでもいいや。お金もないし、私なんている価値もないし。体を売っちゃえばいい……」 <興味もなければ、一生関わることもないと思っていた世界だけど。 とりあえず私の価値を誰かにつけて欲しい。1万円でもいい、数千円でもいいから……。 それに今は、何も考えられないほどめちゃくちゃに汚れたい気分なの> 結衣、緊張した顔でソープランドの扉を開ける。 ■場面転換(錦糸町・ソープランド・店内・夜) <うわぁ、すごいな……> 薄暗い部屋の中は、胸をやけに強調していたり、お尻が見えそうなくらい短いスカートをはいた女の人の写真が無数に飾ってあり、ピンクの照明に当てられている。 結衣、たじろぐ。 入店を示す音が店内に流れ、『受付』カウンターの向こうにある真っ黒なカーテンから、小太りで眼鏡の中年男性(ソープランドの店長:以下より店長)が顔を出す。 店長「いらっしゃいませ~! んん? あなた新入りさんですか?」 結衣「いえ、看板を見て興味を持って。働かせてもらいたいなと思っているのですが」 店長「へぇ……それはそれは。ちょっとそこで待ってて下さいますか?」 店長は驚いた様子で結衣を下から上にじっくりと眺める。 すぐにソープランド店長はシャッと音を立て、カーテンの向こうに消えていく。 結衣、固まる。 結衣「ここまで来たんだから、あとは頑張るだけ。怖がっちゃだめ……」 <何もかも忘れたいの……> 再びシャッと受付カウンターのカーテンが開き、店長が笑顔で顔を出す。 店長「今から面接しますので、僕の後について来てくれますか?」 結衣「えっ、は、はい!!」 <こんなに早い展開なんだ。風俗ってすごいなぁ> ■場面転換(ソープランド・廊下・夜) 店長の後に続き、結衣は緊張しながら店内の突き当りの部屋に向かう。 ■場面転換(ソープランド・一室・夜) 蛍光灯が煌々としている、汚い部屋。ロッカーもある。 床にはヒールや、脱いだばかりとおぼしきストッキングが落ちている。 <き、汚い。掃除とかしないのかなぁ……ん?> 結衣が振り返ると、※木島達樹が足を組んでパイプ椅子に座っている。 無表情で金髪オールバックに全身黒スーツ着用。 達樹「そこどうぞ」 結衣「は、はい」 <怖い、この人絶対ヤクザでしょ。やっぱり風俗ってそういうところなんだ> 結衣は緊張した面持ちで、達樹の向かい側にあるパイプ椅子におそるおそる座る。 達樹「うちのお店に興味を持ってくださってありがとうございます。あなた、今まで風俗で働いたことはあります?」 結衣「いえ、一度も……」 達樹「では、キャバクラやバーでは?」 結衣「ありません」 達樹「そうですか」 無表情の達樹と怯える結衣が見つめ合う。 <あれ、この人どこかで見たことある……?> 結衣がジーッと達樹の顔を凝視していると、達樹も訝しげに眉をひそめる。 達樹「あれ? あんた、どっかで会ったことあるよね?」 結衣「それ、私も今思ったところなんです!」 見つめ合った後、どちらともなくその場に立ち上がる。 達樹「結衣ねえ!」 結衣「達樹!」 達樹「10年以上会ってなかったのに、こんなところで!」 <う、うそだぁ。本当にあの達樹なの!?> ■場面転換(キラキラ) <達樹は昔実家の近所に住んでいた男の子> 幼稚園児の達樹が笑う。 達樹「結衣ねぇ~ぼくと一緒にあそぼうよぉ」 <女の子顔負けの可愛い男の子……だったはずなんだけど> ■場面転換(ソープランド・一室・夜) <なんでこんな姿になってるの?> 達樹「つーかこんなところで何やってんだよ? まさか旦那に内緒で? 淫婦じゃん」 結衣「ひっど! 私だって色々あるのよ。金欲しさだけでここにやって来てるわけじゃないんだから……!」 達樹「どういうこと?」 ■時間経過 達樹「……そういうことね」 <よかった、ちゃんと伝わった……> 笑顔の達樹と苦笑いをする結衣。 結衣「ということで、今日から私は居場所もないしお金もないの。ここで雇ってほしいんだけど」 達樹「えー、それはちょっとなぁ」 結衣「ええっ、なんでよ!?」 驚く結衣を、達樹はニコニコ顔で見つめる。 達樹「じゃあ俺の家にこれば。仕事も恵んであげるからさ、オッサンに体を売らずに安全な方法で稼ぎなって!」 結衣「え?」 ■場面転換(ボロアパートの一室・夜) 部屋を見渡し、呆然とする結衣。笑顔の達樹。 結衣「ここは……」 <ぼろいけど、まぁまぁ綺麗……> 達樹「俺の家だよ。2部屋あるし、1室は結衣ねえが使って」 結衣「うう、助かった」 <神様! 私に達樹様という救世主を与えてくれてありがとうございます!> ※以上より回想終わり ■場面転換(ボロアパートの一室・布団が敷いてある・夜) <とりあえずはタダで、衣・食・住を与えてもらって……。 さらに身の回りの物を買えるように、仕事まで恵んでくれた達樹には本当に頭が上がらない> 結衣、笑顔で息を吐く。 結衣「本当に達樹がいてくれてよかった……」 するとそのタイミングでスマホのバイブがブーブーと音を立てる。 結衣「まただ……」 スマホを手に取り、着信元を確認する結衣。 画面に表示されているのは、夫、修一の名前。 結衣「ちゃんと友達の家にいるって言ってるのに、どんだけしつこいのよ」 結衣、急いでスマホの電源を落とし、連絡を遮断する。 <何も考えたくない。今はただここで現実逃避をさせてほしいの> 頭を抱え、目をつむる結衣。 すると頭の中で修一が不貞行為をしているときの場面がフラッシュバックする。 結衣「うっ!」 枕元に置いてあったゴミ箱に顔を入れる結衣。 結衣「うっ、おぇ……」 結衣の頬に涙がつたう。 <修一なんて、だいっきらい。私のこれまでの5年間は一体なんだったの? 一生愛してくれるって、誓ったのに……大ウソつき> ※以下より回想に入ります ■場面転換(結衣が住むタワーマンション・一室・昼) 修一、笑顔で食事をしながら皿を洗う結衣に話しかける。 修一「本当に結衣の手料理はうまいよ。正直うちの母親よりね」 結衣「ふふ、嬉しいな。修一」 ■場面転換(オフィス・昼) スーツ姿の修一、笑顔で同僚たちに囲まれる。 遠くで微笑むOL姿の結衣。 <修一は、元会社の同僚。 頭が良くて、明るくて。たくさん友達もいて、私にないものをたくさん持ってる人だった> ■場面転換(結婚式場・昼) 結婚式のチャペルで人に囲まれ、微笑む修一と結衣。 結衣、満面の笑顔でブーケトスをする。 <結婚してからは子供ができなかったけれど、私を責めることもしなかったし、2人で楽しい老後を過ごそうとまで言っていた。 いつから私を裏切っていたんだろう、不妊治療を始めてから? それよりも前? 全然、見当がつかない> ※以上より回想終わります ■場面転換(ボロアパートの一室・布団が敷いてある・夜) 結衣、泣きながら布団の上で項垂れる。 結衣「ホント私、みじめだな……」 <さっきまで達樹への感謝の気持ちでいっぱいだった胸の中は、胃と一緒に空っぽになっちゃった> すると、襖がトントンと叩かれる。 結衣「!」 達樹「結衣ねえ、大丈夫?」 襖越しに、達樹が結衣に話しかける。 結衣「達樹……イヤな音聞かせちゃってごめんね。スッキリしたから眠れそうだよ」 達樹「辛くなったら、すぐ呼んでね。俺が慰めてやるから」 結衣「うん。ありがとう」 <達樹、本当に優しいな> 結衣、胸元を握りしめ静かに涙を流す。 ■場面転換(ボロアパートの一室・襖の前・夜) 達樹が暗闇の中で妖し気に笑う。 <達樹には昔から助けてもらいっぱなしだよね。絶対に近いうち、恩返しするから……> ★第1話・END
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