第四章 未必の嫉妬に揺らぐ代理の自覚

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 姉の変化を知ったら、大知さんはなにを思うんだろう。……怖い。  結婚して何年も経っているならまだしも、私たちは数カ月前に結婚したばかりだ。それまで付き合っていたわけでもないし、さらには今もまだぎこちなさが拭えない。  さっき姉と専門的な話で盛り上がっていたとき、ついていけない私を気遣って話題を変えてくれたのは、おそらく大知さんの優しさだ。  逆に言えば気を使わせていた。お酒を家で飲まないのも、もしかしたら……。  あれこれ考えて沈みそうになる気持ちを振り払う。それから気持ちが落ち着くまでその場でぼうっと過ごした。  姉が去ってからわりと時間が経過して我に返る。いつまでここにひとりでいるつもりなのか。  見送りだけのつもりで着の身着のまま出てきていたので、少しだけ夜の肌寒さが身に染みる。  大知さん、まだ自室にいるかな?  音を立てないよう自宅に向かい、玄関ドアを開けそっと中に入る。 「どこに行っていた?」  靴を脱ごうとしたら、ドアの音か気配を感じてか大知さんが奥からやって来た。その顔はいつになく怖くて、無意識に背筋を正す。 「心配しただろ。万希はとっくに帰っているのに、スマホも鞄も置いていってなかなか帰ってこないから」 「ご、ごめんなさい」  さっと血の気が引き、即座に頭を下げた。少しの間だけと思い大知さんになにも伝えず外に出ていたが、彼からすると見送りにしては下にタクシーの姿も見えないし、時間も経ちすぎている。
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