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校庭の端にある桜の木が心地良い日陰を作っているそこで、直斗はウトウトと微睡んでいた。
最近にしては爽やかな風が少し長めの前髪を擽り、それにも身を任せていた。
すると直斗の顔にもう一つ濃い影が落ち、それに目を開けようとした途端、額を決して“軽く”ない力で叩かれた。
「──痛ったっっ!!」
その衝撃と言っても過言ではない痛みに直斗は起き上がり振り返ると『彼女』の莉央と目が合った。
その後には呆れ顔の康平もいる。
「またやったって!?」
莉央が直斗を睨みつける。
すると直斗は康平を睨みつけ
「…言いつけんなよ………」
そう言った途端また額を叩かれる……。
「───!……」
さっきよりまだ強い“衝撃”に再び手で額を押さえた。
「……………莉央ちゃん……マジで痛いから…」
手を離すと真っ赤になったおでこが見える。
「本気でぶってるんだから痛くなきゃ困るでしょ!」
そう怒鳴ると、莉央はため息を吐き直斗の横に座り込んだ。
「一緒に卒業しようって約束したよね…?」
「莉央、大袈裟」
笑いながら莉央の膝を枕にまた寝転がる直斗に
「大袈裟じゃないよ!もう……!」
そう言いながら、言葉とは裏腹に自分の膝の上で目を閉じる直斗の髪を優しく撫でる。
直斗が 「付き合おうよ」 そう声を掛けてくれる前から好きだった。
恐らく初めて“一目惚れ”というものをした。
それからクラスの違う直斗ばかり目の端で探し、見つけるとずっと目で追っていた。
「お前は気が短か過ぎなんだよ」
康平も呆れたように近くに腰を下ろした。
──そんなこと言われなくても解ってる…
バスケが出来なくなってから、全てがどうでも良くなっていた。
そして全てにイラついた。
「直斗……一緒に卒業しようね……」
莉央の寂しそうな声に直斗は目を開けた。
「じゃあ……キスしてよ……」
起き上がり莉央の頬に手を当てると、答えを待たずに唇を重ねた。
莉央といる時は落ち着いていられた。
他の娘と遊んでいても莉央と別れる気は無かったし、それを煩く言わない莉央が好きだとも思った。
「…………お前ら…そういうのは俺がいないトコでやってくんねぇ?」
そんな訴えすら無視してキスを続ける直斗に「やってらんねぇわ……」と康平も寝転がった。
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