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「あいつ…何も言わなかったな……」
ホームルームが終わり康平と教室を出ながら直斗は担任の姿を振り返った。
「良かったじゃねーか。水野先生が言わないでおいてくれたんだろ?」
「………………」
授業も終わり生徒達がおしゃべりをしたり、帰り支度をしたり皆自由に過ごし始める。
「藤井ー!──ねえ!一緒にカラオケ行こー!」
隣のクラスの女子が直斗を見つけるなり後ろから抱きついた。
「真希ちゃんじゃん」
直斗が肩越しに笑顔を向ける。
「ごめんねー。今日は莉央と帰るから無理。また今度ね」
「えー!……」
「今度絶対行くから!約束する!」
「んー…絶対ね」
抱きついたまま甘えた様に言った。
「何が約束なの?」
いつの間にか莉央が目の前に立っている。
直斗に抱きついている挑戦的な笑顔を一瞥するが、すぐに直斗に視線を戻した。
こんなこといちいち気にしていたら直斗の彼女などやっていられない。
「あ、莉央、おつかれー」
直斗が今度は莉央に笑顔をむけると
「真希ちゃんまたねー」
悪びれる様子もなく真希の手を解いた。
直斗は抱きつく様に莉央の肩に腕を回し歩き出す。
康平は慣れたものでその間ずっとスマホでゲームをしていたが、直斗と莉央の後から歩き出した。
「少しは隠したら?」
「えー、無理無理。俺正直者だから。隠して後でバレるなら隠さない方がいいっしょ」
莉央が呆れ顔で溜息をついた。
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