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国王、病に倒る――。
半月ほど前の衝撃的な事件だった。このことは王自身によってすぐさま箝口令が敷かれたため、側近中の側近しか知らぬ秘事となっていた。
ゼキの立場上、そのとき王都に居さえしたならば、彼も秘密を知る一員にはなり得たかもしれない。
しかし、彼は遠い国境線へ遠征に出ていた。王宮の秘密を知る術などないはずではないか。帰還後に彼へ知らせに行った者もいない。
「なぜ、将軍がそれを……」
ゼキは答えなかった。身じろぎさえしなかった。
ただ、閉ざされた扉を見つめていた瞳だけが、麗しい三人の守護者へと向けられた。
深い緑の瞳を見返して、問いの答えがわかるはずもなかったが、代わりに見えてくるものがある。
普段彼の中に秘められているはずの感情が、国王に対する強い思いが、瞳のごく浅いところにまで浮き上がってしまっていたのだ。
三人は各々その感情を読み取った。そして一様の解答を得て、まるで雷に撃たれたかのような心理的衝撃を受けた。
その時だった。ははははは、という屈託のない笑い声が聴こえてきたのは。
女戦士たちはゼキから目を逸らしはしなかったが、心だけは大きく国王の寝所を振り仰いだ。
扉の両脇には武の男神と智の女神の見事な彫刻が佇んでおり、超然と彼女らを見下ろしている。
笑い声の主は、引き続き扉の向こうから言葉をかけてきた。
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