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「レナーテ、サブリナ、そしてマヌー。お前たちの忠誠心、まことに嬉しく頼もしい。だがわたしが許す。そこの将軍殿を通しておやり」
「で、ですが陛下、まだお身体が……」
「そうだなレナーテ。でも、実に五十日ぶりに可愛い臣下と対面できるかと思うと、気力も湧いてくるというものだよ」
「陛下、しかしながら、その……」
「おや、心配性だなサブリナ。その男を通すと、余計にわたしの具合が悪くなるとでも?」
「そっ、そうです! その危険性がございます!」
「ほう、マヌーよ。わたしがその者に会うと悪化すると? おやおやそれはなぜ? なぜだろう、なあゼキ将軍?」
「お戯れを」
楽しげな王の問いかけであったが、ゼキの反応は思いのほか冷たく、取り合おうともしなかった。
その一言が背後から聞こえてきたこと、そして石造りの廊下に反響する靴音を聞いて初めて、三人の娘は男が歩みを再開していることに気がついた。
その時ゼキの体はすでに彼女たちの包囲を抜け、扉の目の前まで近づいている。
「……!」
あまりに圧倒的な力の差の現れであった。武芸を心得る者として、背筋に戦慄が走っている。
心が折れそうですらある。
彼には剣を抜く必要も、女たちを乱暴に押し退ける必要もないのだ。そして本当は「通してくれ」と頼む必要さえなかったのだ。戦士三人分の呼吸と隙を見極め、ただ歩むだけで守りを突破してしまうことができるのだから……。
女戦士たちの目に、王の紋章を背負う男の姿は、武神ヘイムスクリングラの化身のごとく映った。
その武、その身をすべて捧げるかのように、ゼキは利き腕と額で扉に触れた。
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