下賜の外套

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「陛下、やはりお声に元気がありませぬ。このゼキの前で見栄は不要です。ご無理をなさいますな」 「……うん」 「入ってもよろしいのですね?」 「それ以上怒らないのならよいぞ」 「怒ってなどおりませぬ」 「いいや怒っている。謝るからこっちにおいで。ああしかしその前に、レナーテ、サブリナ、マヌー!」  なかば茫然自失としていた三人は、はっとして槍を握り直し姿勢を正した。  しかしそこへ申し渡された国王の命が予想外のもので、また槍を取り落としそうになってしまう。 「お前たちも気を張り通しで疲れたろう。今日の護衛はもうよいから、下がって休むといい」 「陛下、そんな!」 「危のうございます!」 「何を案ずることがある? いくらわたしが弱っているとはいえ、この国で一番の勇者が共にあるというのに」 「それは……その」 「ふふ、落ち込むな。お前たちを軽んじて言ったわけではない。本当に感謝しているし、休んでほしいのだ。仕事はそこの大きい仔犬みたいな男に任せて、ゆっくりしてくるといい」 「え……」  ――ゼキ将軍をつかまえて、「大きい仔犬」とは何の意図あってのことか。  彼女たちのその違和感は、ゼキがほんの少し振り返って垣間見せた表情にて解消されることとなる。
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