24人が本棚に入れています
本棚に追加
「そなたたちの誇りに傷をつけるような真似をしてすまなかった。我を忘れ突き進んできた俺のほうこそ修行が足りぬ。俺とて、そなたたちの働きには心から感謝しているのに……」
「いっ、いいえ! いいえ!」
「ででで、ではお言葉に甘えまして!」
「陛下、おやすみなさいませ……!」
――果たして自覚があるのかどうか。
ライベルクの大英雄が、まるで雨に濡れた仔犬のように哀れな顔をしているのをそれ以上直視できず、三人衆はばたばたとその場を駆け去ってゆく。
元々、同じ武人として、ゼキ将軍を尊敬せずにいられる若者などライベルクに存在しない。
この三人にしても例外ではなかった。
国王を最も近くで守護する身として、先は私情を抜きにして職務を最優先させたものの、本当は途方もない緊張が体を支配していた。過去何度かゼキに剣槍の稽古をつけてもらったことがあるという経験などは、生涯の宝とさえ思っているのだ。
そんな憧れの存在が抱えるとんでもない弱味を、彼女たちはもう本能的に悟ってしまっていた。
――わたしたちがゼキ将軍へ抱く淡い思慕よりももっと熱く確かなものを、将軍はあの静かな瞳の中に隠し持っておられる!
娘たちは大いに動揺し、汗を流し、頬を真っ赤に染めながら、逃げるように王の寝所から遠ざかっていくのだった。
最初のコメントを投稿しよう!