下賜の外套

17/28
前へ
/89ページ
次へ
 黙って歩み寄り、騎士は少女のすぐ後ろに控えた。  風がバルコニーまで届くたび、長い金髪が翼のように広がって、また背中にこぼれ落ちるのを繰り返す。  白いワンピースの生地は羽衣のように薄いようだ。黄金の斜陽に透かされ、少女の華奢な肢体をおぼろな影絵のように浮かび上がらせてしまっている。ゼキは少し目を伏せた。  少女の頭は騎士の胸と同じ高さにある。髪に隠れた横顔が言葉を切ったままでいるため、ゼキは前方の鳥に目を投じながらこう言った。 「まぬけな夢、と仰いましたが、それで仕舞いでございますか。それとも、もしやそこで御覧になったわたしの戦がそうだったのでしょうか」 「まさか。むしろあまりにも危なげのない戦いぶりであったから、しばらく感心して見ていたよ。……まぬけだったのはわたしのほうだ」  戦いが終わるのを木の枝にでも止まって待っていればよかったのに、そうしなかった。何の意地か、翼を休めるのは騎士の元でと頑なに決めていた。  広い森林の上を飛び回りながら待つうちに、鳥は疲れ果て、翼も動かなくなり、やがて遥かな空から落ちていってしまった……。
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加