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部屋が薄暗くなったというのに、少女の金髪はそれ自体が青白い光を帯びているかのようだった。夕陽を浴びているときはわかりにくかったが、本来は黄金色というよりほとんど白金に近い色をしている。
その美しい髪を巻きこまぬよう、ゼキは少女の身体を慎重にベッドに横たえさせ、しっかり毛布までかけた。
それが終わると、恭しく一歩下がって跪く。少女は苦笑してその姿を見た。
「おかえり、ゼキ」
「ただいま戻りました。国王陛下」
「五十日ぶりだぞ。せっかく人払いをしたのだぞ。名前で呼んでくれないのか」
「――アウレリア、陛下……」
ためらいがちに呼び、ゼキは伏せていた顔を少し上げた。
国王アウレリアは弱冠十七歳の少女であるが、ライベルクを治める重責がそうさせたのか、そのあえかな笑みはどんな大人よりも泰然自若の感がある。
「よく戻った。怪我などしなかったか」
「は。……」
「ならばよかったが、少し頬がこけたのではないか。糧食に問題があったのではなかろうな」
「は、特には……」
「目の隈も目立っているぞ。無理な行軍をしたのではないか?」
「いえ……」
「ゼキよ、なにやら言いたげだな。ふう……仕方がない。わたしもちょっと腹を決めるから、怒るなら怒ってくれても構わぬよ」
「怒ってなどおりませぬ。ですが、陛下よりこのような手紙を頂いたものですから、このゼキ、今日まで生きた心地がいたしませんでした」
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