下賜の外套

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「陛下。もうひとつお尋ねしたいことがございます」 「なんだ? ゼキ」 「お教えください。こたびのご病気、原因はなんだったのでございましょうか」  ゼキの声の低さに、アウレリアはようやく異変を察した。  しかし、あえて真剣に取り合わないことを選択したらしい。琥珀色の瞳に余裕をたたえさせながら、美しい弧を描く己の口元に指先で触れてみせる。 「おやおやゼキ、心配してくれるのか。そなたの留守中に、わたしの唇がどこぞの男に奪われて穢れを移されたのではないかと、そう疑っているのかな? まあわたしも、こんな性格ではあるが一応は年頃の乙女。そういう悪いことを考えてしまう輩も、どこかにいるのかもしれないな……」  みしり、と床が恐ろしく軋むのを聞いて、アウレリアは悪ふざけが過ぎたことを悟っただろう。  王国最強の騎士がゆっくりと立ち上がると、凍りついたアウレリアの笑顔にまで真っ暗な影が落ちた。  長い外套の分だけ大きくなる影を引きずり、剣と甲冑を微かに鳴らしながら、男は広いベッドへと乗り上げてきた。
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