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「……陛下のご病気につきましては、このゼキ、まことにお気の毒なことと存じます」
ライベルク王家の人間は、武神ヘイムスクリングラと智神エッダの末裔と言い伝わる。
その神聖な血を守るため、王家ではかねてから近親結婚が繰り返されてきた。
皮肉にもその結果、肉体や精神に欠陥を持って生まれる王族が跡を絶たなくなってしまった。アウレリアもそのひとりである。
彼女の熱病には特殊な引き金が設定されていた。人間の体液だ。アウレリアにとって、それは恐るべき猛毒であった。
幼い頃、菓子を食べて倒れたことがあった。彼女の兄が口をつけていたものを、そうとわからずに食べてしまったせいだった。
笛を吹いて具合が悪くなったこともあった。職人が笛を作りながら試し吹きした際の痕跡が、ほんの僅かに残っていたためだった。
こういう都度に死にかけるほどの発作に見舞われる彼女は、いつしか影で「永遠の処女」と揶揄されるようになった。
無論、彼女がいずれ伴侶を得るとか、子供を産むとか――あるいはもっと短絡的で下世話な想像をしてやってから、ああ、この美しい少女が女としての悦びを知ることは永遠にないのだな、と憐れんでそう呼ぶのだった。
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