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「だが、そうだな、約束をするのならば離してやってもよいぞ。今度……いや明日だ。明日、わたしと一緒にそのスープを食すこと」
「……もしやその料理人、まだ王宮にとどめておられるのですか」
「誰が追放などするか。本当に腕のよい料理人なのだぞ? トマトを使った甘味のある赤いスープならばライベルクにもあるが、あれは香辛料が効いていて、少し辛いスープなのだ。珍しいしおもしろい。他の料理も楽しみだ」
自分を害した料理人を赦せ、と、アウレリアはゼキに頼んでいるのだった。
ためらった末、不承不承頷こうとしたゼキは、少女の身体が震え始めていることに気がついた。
「陛下?」
後頭部を押さえ込んでいた腕も脱力したため、ゼキは半身を起こしてアウレリアの顔を覗き込んだ。
「震えておられます。またお加減が悪くなられたのでは?」
「そうか? いや、疲れてはいるが、熱っぽくはないぞ」
「お寒くはありませんか」
「そういえばちょっと寒いな。そろそろ夜だからだろう」
確かにアウレリアは薄着だが、気になるほど気温が下がった感じはしない。
「……また熱が上がる予兆でしょう。医者を呼んで参ります」
ゼキはそう告げ、すぐさまベッドから降りようとした。しかしアウレリアが鋭く制止する。
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