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「よし。マヌー行け」
茂みから勢いよく飛び出したのは、まだ十五、六歳と見える背の低い少女だった。
暴れる鳥は、翼を広げれば少女の身長を超えるほどに大きいが、恐れることもなく飛びついて抑えこむ。ばきばきばきという音がして、鳥は永久に動かなくなった。
「ああ」という嘆息とともに、青年も茂みから姿を現した。
大きなヘーゼルの瞳、柔らかそうな赤毛、優しく幼げな顔立ちは、鳥を仕留めた少女と瓜二つだ。衣服にくっついた草や土を払いつつ、呆れたような表情で歩み寄ってくる。
「気の毒に。そんなに細かく全身の骨をへし折ることもなかったじゃないか」
「だ、だってお兄ちゃん。えいって抱きついたら、なんか簡単に折れちゃったんだよ」
「それはマヌーが毎日ケーキばかり食べているからだよ。少しダイエットでもしたら?」
「そんなに重くないもん!」
鳥の首を握りしめたまま抗議するマヌーを手招きして、青年は億劫そうに川岸の石に腰かけた。ハンカチを取り出し、びしょ濡れになった妹の髪や体を拭いてやる。
と、少し離れたところから彼を呼ばわる声がした。
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