24人が本棚に入れています
本棚に追加
/89ページ
「ミカリー! どうやらおまえも手柄を上げたようだな。主に妹のおかげであろうが」
「一言余計ですよ、ブリッツ殿」
赤毛のミカリー、マヌーはそろって近くの崖を見上げた。
四、五メートルほど上方に、馬を立てた美丈夫がひとりいる。
「ちょうどよい、そろそろ合流の時間だろう。ふたりともこちらへ上がってこい」
細身のミカリーよりずっと優れた体格の男は、人にものを命じ慣れている態度で指示してきた。
ミカリーは崖を下から上まで眺め、いやそうに顔を歪めたが、マヌーは素直に従った。
突き出した木の根や石をしっかりと掴み、足場にし、あっという間に頂上まで登ってしまう。しかも獲物を脇に抱えたまま、ほとんど片手で自分の体重を持ち上げたのだ。
「ふむ、やはりマヌーはよく動けるな」
「えへへ、そうですよねブリッツ様。こんなこと、太っちょにはとてもできないですよね?」
「なんのことか知らんが、健やかな妹と貧弱な兄、どちらが哀れかは自明の理だ」
「そこの筋肉二人組、気が済んだなら早くわたしを引き上げてくださいよ!」
ようやく兄妹が崖の上にそろうと、ブリッツは自分の乗馬とは別に連れていた二頭の馬を引き渡した。ミカリーとマヌーがそれぞれ乗ってきた馬だが、隠れて獲物を待つのに邪魔であったので、ブリッツに預けておいたのだ。
「マヌーが来たなら安心だ。俺の獲物をどう運んだものかと、少々難儀していたのでな」
笑うブリッツに導かれるまま森に入ると、彼がひとりで仕留めたという禽獣たちが横たわっていた。
雉が五羽、兎が四羽、猪が一頭、それに立派な角を持つ牡鹿が一頭。感嘆の声を上げるマヌーとは対照的に、ミカリーは渋面を見せた。
最初のコメントを投稿しよう!