下賜の外套

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 こたびも騎士は手紙の内容をなんとなく推量しつつ、梟の足首から小さな筒を取り外した。予想としては、「そろそろ王都へ帰ってくるのであろうな」と確認する一文がある気がする。  期間五十日を予定とするこの遠征では、国境線の警備を兼ねながら、領土を侵す魔物達を退治し、王国として圧力を加えることを主な目的としていた。  ゼキらが王都を発ってから、今日で四十日目となる。  ライベルクは広大だ。十日は費やすであろう帰路のこと、そして兵糧のことを考えると、もう安全な撤退のタイミングを過ぎてさえいる。最後の最後で大きな衝突が起こったため、ぎりぎりの線まで滞在期間が伸びてしまったのだ。  しかし、お陰で成果は充分であった。王宮には、若くして将軍の地位を得たゼキを快く思わない人間もいるが、この内容ならば特に文句のつけようもないだろう。  ゼキ自身は人にどう思われようと構わぬという性質だが、将たる自分が誰にも嘲笑われない限り、兵士たちも胸を張って帰ることができる。多くの兵に支えられている身として、それはまことに大切なことと思っている……。  固い騎士の指がこまごまと器用に動いて、小さな筒の口を開けた。巻いて収められた紙片を丁重に取り出す。  手紙を平らに広げ、肩の梟と共にじっと見つめるうちに、ゼキの顔色だけがみるみる変わっていった。 「陛下……!」  その後、ゼキはすぐに宿営地へ戻り、部下たちに帰還の指示を下した。  自らも荷をまとめ仕度を整える将軍は、いつも通りの落ち着いた様子であった。中には「お顔色が優れぬご様子……」と心配する者もいたが、ゼキは静かに首を横に振るだけで、何も言わなかった。  若い梟の姿は、既になかった。
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