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7月初旬。季節が夏という門を潜る中、校舎の日陰を探してベンチに腰を下ろす女子生徒。セミショートの髪型を揺らしながら、舞い落ちる葉を見つめている。
木陰越しに見える太陽の輝きは、遠くで揺れている陽炎と共に暑さを感じさせる。夏服に変わったばかりの制服が、下着越しに肌にくっついてしまう気持ち悪さに彼女は眉を寄せる。
「……暑い」
スカートをパタパタとしたり、手で自分の顔を仰いで涼もうとするが、それ程の効果が無い事は明白。日差しが強いと感じてしまった事で、教室に居るというのも涼めないと判断したのだろう。
しかし外に出た所で、太陽の日差しの眩しさと生温い風によって暑さが増してしまっている。そんな彼女の姿を見つけたのか、一人の女子生徒がポニーテールを揺らして口角を上げる。
悪戯心が芽生えたのか、両手に持ったそれを持って抜き足忍び足で近寄る。その女子生徒はゆっくりと近寄り、ニヤリと笑みを浮かべて手に持ったそれをベンチに座っている彼女に近付ける。
「えい」
「ひょわぁ!?」
「あはははは、驚き過ぎだよ澪」
「いきなり冷たい物を首当てられたら、誰だってこうなるよっ!涼」
自分の首裏を押さえながら、澪はベンチから飛び上がった。その様子が面白かったのか、涼はお腹を抱えながら笑っている。頬を膨らませる澪は、再びベンチに座って隣に座る涼を見つめる。
「遅かったじゃん。何分待たせるのさ」
「まだ全然時間経ってないでしょ?これでも急いだんだぞ?」
そう言って「はい」と手渡されたそれに視線を落とす澪は、財布を出そうとするが涼が白い歯を見せて澪の額を指先で叩く。
「あたしの奢り。待たせた分はそれでチャラって事で」
「良いの?……ん~、それじゃ遠慮なく」
「素直でよろしい。さーて、新作の味は何かなぁ~♪」
そう言いながらそれの蓋を開けた涼は、紙スプーン一杯に掬いあげて頬張った。ほぼ同時に澪も頬張ると、彼女達は互いに笑みを浮かべて言うのであった。
「「美味い♪」」
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