大梧と竜義 ①

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大梧と竜義 ①

「ねぇ兼村さん、村上さんと渉流さん、ついに引っ越したんだってね!?」 「まだだろ?翔馬が引っ越したってのは聞いたけど?」 「え?そうなの?でも村上さんが引っ越したんなら…」 「雨宮はまだ無理だろ。翔馬が身元引受人になる手続きをしてるらしいから、それが済んだら一緒に暮らすんだろうけど」 「ふ~ん…渉流さん寂しくないかな…」 「……ならお前が一緒に居てやれば?」 「え?」 怒った様な拗ねた様な言い種に振り返ると、ぷいっとそっぽを向いて兼村さんはリビングを出て行った。 「ちょっ、ちょっと兼村さん!」 リュウが雨宮を慕っているのは解ってる。 其処には決して下心とか邪な想いが無い事も…なのに邪推してしまう俺は、何処まで心が狭いんだろう 「俺、明日は翔馬の引っ越しの手伝いで一日居ないからな」 「えっ?!聞いてないよ、そんな話」 「だから今言ったろ」 「一日って朝から晩まで?」 「そう、朝から晩まで」 「わ、渉流さんも一緒なの?」 「さあな。仕事じゃないのか?パン工場、今忙しいって翔馬が言ってたから」 冷蔵庫の扉を開け様とした手を、不意に後ろから握られて立ち竦む。 振り返ってくれない人の肩に顎を乗せ、ちょっとだけ嫉妬心を仄めかす。 「兼村さんって村上さんと仲良いよね」 「そりゃあ…同期だからな…」 「いろいろ相談に乗ってあげたり、…渉流さんとの事も力になってあげたんでしょ?」 「…親友…だからな」 「それだけ?」 「……何が言いたいんだよ」 「………」 「リュウ?」 「…俺も…明日手伝いに行く!」 そう言って兼村さんの背中からパッと離れる。 「はあっ!?お前、仕事は?!」 突拍子も無い台詞に振り返ると、リュウはさっさと寝室に向かいながら 「ほら、兼村さんも早く寝よ。明日は朝から力仕事になるんでしょ」 子犬みたいな顔で振り返り「早く早く!」と俺を呼んだ。
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