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翔馬と渉流 ②
浴室を出て、脱衣所で服を着ながら鏡の中の自分を見る。
年齢よりも幼く見られる事の多い顔が、此方を見返していた。
まだ少し濡れている髪をタオルで拭いながら、ふと兼村を思い出す。
俺の茶色い髪と違って艶のある綺麗な黒髪をしていた。
「…髪色変えたら……俺ももう少し年相応に見えるかな…」
そんな事を呟いた鏡の中の自分に苦笑して、タオルを脱衣籠に放り込むと脱衣所を出た。
寝室のドアを開けると、広いベッドの上に大の字で寝転んだ翔馬が居た。
「翔馬、ちゃんと布団の中に入れよ」
近づいてポンポンと肩を叩くと、軽く寝ていたらしい翔馬がゆっくりと目を開ける。
「ん…、渉流…?遅かったな…」
「そうか?寝てたからそう感じるんじゃない?」
「俺……寝てた?」
小さく笑い返して、上半身を起こした翔馬の隣に腰を下ろす。
「ソファとかこのベッドとか重たい家具ばっかり運んで疲れたんだろ。お疲れさま」
「…本当は、たとえ大梧や桧山でもこれは触らせたくなかったんだけど…流石に重過ぎた」
そう笑って、2人で横になっても充分過ぎるほど広いベッドをポンと叩いた翔馬が、俺の腕を掴んで引き寄せると自分の額を俺の肩の上にコツンと乗せた。
「翔馬?……どうしたんだ?」
「…ほんとはさ、まだ心配だったんだ……桧山が心の何処かでは渉流を……まだ好きなんじゃないかって…」
ボソボソと呟く様に話す翔馬の声に耳を傾ける。
時々言葉に詰まる翔馬の後頭部を、先を促す様にそっと撫でた。
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