藤吉誠子の本願

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 奈々恵、今まで本当にありがとう。  私は短い間だったけれど、お腹にいてくれた子供と共に、深い深い穴の中でゆっくりと朽ちて、やがて地獄へ行くその日を迎えようと思います。  お母さん、お父さん、壊れてしまった私を受け入れてくれてありがとう。  ふたりの娘で本当に、心から幸せでした。  権藤さん、霧島さん。取り返しがつかないことをした事実は、消えることがないでしょう。むしろずうっと、悔いることになるよう、私はそればかり願っています。  しがみついていたものを取り上げられるたびに、私にしたことを思い出してください。ずっと、ずっと、こちらにいらっしゃるその日まで。   「誠子……どうして、どうしてよ……消えるべきは、あんたじゃないでしょ?」  薄暗い部屋の中、誠子、誠子と消えた同僚の名前を繰り返し呼び、朝田さんは嗚咽を漏らして、隙間なく写真の貼られた壁をバシン、バシンと手のひらで叩いていた。
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