五月六日は西條冬木の誕生日

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* ――わ、わかった。話す。話すけど……嫌いにならないでほしい……。 と言ったものの、どんなふうに言えばいいものか。 いや、どんな言い方をしてもまず軽蔑されること間違いなしだろう。 何年か前から、実は色々……俺、視えるんだ。 同級生の部屋に遊びにいった時、「イイもんあるけど、見る?」って出されたAVで見たみたいなエロいこと。 思春期になるとそういう想像、誰だってすると思う。 いわゆる夜のオカズ、的な。 でも、その相手が。 洸夜なんだ。 ……って言われたら気持ち悪いだろ? 男の俺にさ。 抑圧された性欲ってやつが原因じゃないかと俺は考えている。 性欲を発散できるってだけならさ、女と付き合う、ってのもありなんじゃね? と安易に流れた俺はクソだとも思う。 洸夜は生徒会長だって務めていた、真面目で優秀で誰からも尊敬される存在。 俺の大切でそして大好きな人。 俺の〈好き〉は洸夜が俺に向けてくれる〈好き〉とはちょっと違うんだ。 洸夜は、いつまで経っても俺のことを手のかかる弟分として可愛がりかまってくれる。 そんな彼のことを俺は恋愛対象としてみているわけで。 こんなの、誰にも言えない秘密だろ? 至近距離ですごまれた。 マジで怒っている洸夜に逆らえるヤツなんていない。小中高と一緒に過ごして近くで見てきた俺はよくわかってる。 生徒会長をしていた時、洸夜は聖君であり暴君でもあったから。 誤魔化せないと腹を括るしかなくて。 正直に言ったら怒られるよな? 殴られても蹴られても平謝りすれば……許してくれるかな? あぁ、でも軽蔑されたら俺……。 と、クソ冷たい目で俺を睨む洸夜の顔を想像したらちょっと興奮した。 だって、目と鼻の先に洸夜の顔がある。 洸夜の腕が、足が俺に絡みついてるんだぞ。 興奮するだろ。 「まず、おかしいって言われるかもだけど……洸夜はうさ耳で」 いきなり意味不明な説明を始めた俺に洸夜の肩頬がぴく、と動く。 (やっぱり呆れられてるーー……) 冷や汗しか出でこないぞ。 ゴクリと唾を飲み込んで見上げると、話を続けるように目顔で指示された。 「し、しかも洸夜が……は」 ーー裸エプロンで……。 危うく全部ゲロってしまう寸前で俺は口を閉じた。我ながらナイスプレイ! と自画自賛したのも束の間、 「は?」 きらりと瞳を輝かせて洸夜が追求してくる。 うぅ、男の俺が見てもカッコイイ。平伏(ひれふ)したいくらいだ。 「……ハッ、てなるほど可愛くて」 だめだ、どこにどう着地しても変態確定だ! ギュッと両目をつむった俺の耳に、 「……あたってる」 という洸夜のつぶやきが聞こえてきた。
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