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八月一日。
本日は土曜日なので真琴も奏も仕事は休みで、夜のディナーまでは特別予定は入れていない。
想像していた通り、朝食も昼食も、どうやって作ったのかわからない程豪勢な食事を奏は用意してくれていた。
こんなに豪勢なものを作ってしまったら、せっかくのディナーが霞んでしまうのではないかと思うほどに手が混んでいた。
昼食を終えてリビングでゆったりとした時間を過ごしていると、奏が近づいて声をかけてきた。
「もう着ていくものは決まってるの?」
「うん。準備してある」
「まだ着なくてもいいから、どういうのか見せてよ」
「別に良いけど……」
二人は真琴の部屋まで移動し、真琴はクローゼットの中からスマートカジュアルなワンピースを取り出す。
シックで大人びた印象の黒のワンピース。デコルテと袖部分は花柄のレース仕様になっており、ふんわりとAラインに広がるスカートが華やかで女性らしいデザインだ。奏はそれを見ると、満足そうに頷いていた。
「良かった。これなら合いそうだね」
「奏のスーツと?」
「そうじゃないよ」
「じゃあお店と?」
「そうでもなくて」
奏は可笑しそうにくすりと笑った。真琴は何のことかさっぱりわかっていない。
「ちょっとここで待ってて」
そう言って奏は真琴の部屋から出ていき、次に戻ってきた時は包装された箱を抱えて戻ってきた。
「これ、僕から真琴に。誕生日プレゼントだよ」
夜にディナーの予約までしているのに、家の中であっさりと手渡されたものだから少し拍子抜けしてしまう。
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